§7 使用済燃料の再処理

1 再処理の研究開発

 原研では,動燃事業団が計画している使用済燃料再処理工場の職員訓練と再処理技術の確立のため,再処理試験施設が設置されている。43年度は,42年度までに行なわれたコールド試験にひきつづき,43年3月〜44年3月までに3回にわたってJRR-3の使用済燃料を用いてホット試験を行ない,その結果それぞれ,18グラム,105グラム,85グラムの高品位プルトニウムの抽出に成功した。
 また原研では,フッ化物による乾式再処理に関する研究がひきつづき行なわれた。
 動燃事業団では,42年度にひきつづき,原研との共同研究として,再処理施設の廃ガスからのクリプトンおよびキセノンの回収に関する研究および高速炉燃料のフッ化物揮発法による再処理に関する研究が行なわれたほか,低放射性廃液処理に関する研究等が行なわれた。

2 使用済燃料の返還,再処理

 原研のJRR-2および京都大学の原子炉に使用されている燃料は,米国政府から賃借しているので,これらの炉からとり出される使用済燃料は,再処理をしたうえ,米国政府に返還しなければならない。
 このため,原研では,43年8月に第5次返還,京都大学では43年8月に第2次返還がそれぞれ行なわれた。返還量は,原研の第5次分が90%濃縮ウラン燃料要素24本,ウラン量で4kg,放射能は3万キュリーであり,一方,京都大学の第2次分は90%濃縮ウラン燃料要素9本,ウラン量1.6キログラム,放射能は1万キュリーであった。
 また,日本原子力発電(株)は,43年4月,英国原子力公社との間に,東海発電所の使用済燃料の再処理に関する契約に調印した。本契約による使用済燃料の引渡数量は,向う3年間の使用済燃料相当分である160トンである。

3 使用済燃料の輸送

 使用済燃料の輸送については,再処理のために,43年度末までに,原研および京都大学の研究炉の使用済燃料が米国に,それぞれ5回および2回輸送された。さらに,44年7月には,原電東海発電所の使用済燃料が英国に輸送されることになっている。
 このように,使用済燃料の輸送の本格化にともなって,これに関連する規則の整備,輸送手続の簡素化等の問題は提起され関係当局で検討が開始された。

4 再処理工場の建設計画

 動燃事業団では,主に発電用原子炉からの使用済燃料を対象として,湿式ピェーレックス法による処理能力1日当り0.7トンの再処理工場を同事業団の東海事業所内に建設することとしている。このため,同事業団では42年3月,フランスのサンゴバン社に第2次詳細設計を依頼していたが,44年1月終了した。
 また,動燃事業団は,設計の検討をすすめるとともに,47年度完成を目途として同工場の建設に着手することとし,43年8月,内閣総理大臣に安全性に関する書類の提出を行なった。このため,内閣総理大臣からの諮問を受けて原子力委員会は,再処理施設安全審査専門部会に同工場の安全性の審査を指示した。同専門部会は,43年8月から施設関係および環境関係の2グループを設けて本部会と併行して審査をすすめた結果,44年3月,同工場の安全性は十分確保しうる旨,原子力委員会に報告した。
 なお,同工場の建設については,地元において反対があり,同意を得られていない事情にあるので,原子力委員会は設置の許可を内閣総理大臣に答申するにいたらなかった。


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