§3 ウラン資源の確保

1 国内資源の探鉱

 国内における核燃料物質の開発促進を目的とした,「核原料物質開発促進臨時措置法」は41年4月,さらに10年間延長され,43年度はひきつづき通商産業省工業技術院地質調査所および動力炉・核燃料開発事業団(動燃事業団)により探査および探鉱が行なわれた。
 地質調査所は31年度より10年計画で約20万平方キロメートルにわたる探査を実施し,堆積型鉱床胚胎の可能性のある地域10カ所,約1万6,000平方キロメートルを有望地域として選定していたが,43年度にはひきつづき調査がまだ充分でない一部の堆積岩地域に対する補完的探査として山口県でカーボーン調査を,福島県,岡山県,広島県等で放射能異常調査を行ない,数ヵ所で放射能異常を発見した。
 動燃事業団は,42年度にひきつづき福島県常盤地区,岐阜県東濃地区,山口県下等で探鉱を行なった。
 常盤地区においては,福島県いわき市小川町を中心に調査がすすめられ,多数の放射能異常が認められた。44年度においても本地域で調査を継続する予定であり,今後この地域での発展が期待されている。
 東濃地域においては,既知の月吉,美佐野,謡坂各鉱床に補完的調査として試すいを行ない,この結果,月吉鉱床においては多量の高品位鉱が発見され,U308量で286トン(平均品位U308 0.1%)の増加をみた。
 山口県下については,豊浦郡豊田町を中心に従来知られていなかった中生層中の鉱床の実態を把あくすることに重点がおかれた。この結果,既知鉱床周辺の試すいでU308 0.5%の試料が得られた。このほか,三重県,長野県においても各種の調査が行なわれた。
 以上の探鉱の結果,43年度に埋蔵鉱量は2,327,000トン(U308 1,207トン)増加し,44年4月1日現在の埋蔵鉱量は12,600,000トン(U308 6,530トン)となった。なお,このうちの高品位部を集計すると,平均品位U308 0.101%で埋蔵鉱量2,489,000トン(U308 2,514トン)となる。 44年4月1日現在の地区別の埋蔵鉱量は(第4-1表)に示すとおりである。

2 採掘試験および製錬試験

 動燃事業団においては,人形峠鉱山で,従来跡ばらし式の長壁式採掘法を主体として採掘試験を行なってきたが,採掘跡からのラドンガス湧出の防止,鉱滓処理費の節減等を目的として,スライム充てん採掘法の可能性について検討するための各種試験が実施され,それぞれについてデータが把握された。
 また,国産ウラン鉱の処理技術確立のため人形峠鉱山試験製錬所で実施してきた希硫酸浸出,向流洗浄,イオン交換,溶媒抽出の各工程の技術的検計にもとづき43年度はとくに硫酸の消費量を極力節減するための高濃度浸出,粉砕量の節減のための粗粉砕,固液分離工程の処理能力の増大のための除砂分級等が行なわれた。
 一方,粘土質鉱石に対する濃硫酸浸出についても従来の装置を改良し,良好な成績をおさめた。

3 海外資源の確保

 海外のウラン鉱事業調査については,動燃事業団より,6月〜8月にカナダ,ブリティシュコロンビア州(B.C州)へ,また9月〜12月に米国ワイオミング州へそれぞれ調査団が派遣された。
 この結果,B.C州において有望な露頭が発見された。
 海外ウラン探鉱については,42年度より三菱金属鉱業(株)がカナダのリオ・アルゴム社と共同で米国ワイオミング州で探鉱を続けているほか,43年度より電力業界と鉱山業界が米国のカー・マギー社と共同でカナダのオンダリオ州において,また電力業界が,カナダのデニソン社と共同で米国コロラド州において探鉱を開始した。
 長期購入契約については,電力業界によりカナダのリオ・アルゴム社およびデニソン社と1969年から10年間にわたって合計約1万4,000トン(U308)のラウンを購入する契約が結ばれた。


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