第4章 核燃料
§1 核燃料政策

 原子力委員会は,昭和42年4月,「原子力開発利用長期計画」の改訂を行ない,今後の原子力発電の進展にともなう核燃料の需要量の急速な増加に対処するため,今後,国内資源の把握につとめるとともに,国外の核燃料の低廉かつ安定な供給の確保とその有効利用をはかることがとくに重要であり,したがって,長期,短期の購入契約および探鉱開発により海外ウラン資源の確保につとめるかたわら,国際協定により濃縮ウランの確保につとめ,さらには,核燃料の加工,使用済燃料の再処理,プルトニウムの利用,ウラン濃縮等を国内で行なうことにより,わが国に適した核燃料サイクルの確立に努めることが必要であるとした。
 原子力委員会は,長期計画で示したこの基本的な方針の具体化を早急にはかるため,42年6月,核燃料懇談会を開催し,ウラン資源の確保,濃縮ウランの確保,使用済燃料の再処理,プルトニウムの有効利用等,わが国の核燃料政策上重要な7項目をあげ審議を重ねた。その間,ウラン濃縮,プルトニウムの有効利用に関しては,それぞれウラン濃縮分科会,プルトニウム分科会を設け,審議にあたった。
 その後,原子力委員会は,同懇談会の審議結果にもとづき,今後の核燃料政策について検討をすすめていたが,43年6月,今後の核燃料政策については,核燃料懇談会の報告の趣旨をとり入れ,以下の考え方にもとづき,その推進をはかることとした。

(1)海外ウラン資源の確保については,原則として民間企業を中心としてこれを推進することとし,国は探鉱開発等に関する必要な助成および誘導措置を講ずる。
 なお,今後の海外ウラン資源確保の進展状況によっては,上記諸施策の強化等について,再検討を行なうものとする。

(2)ウラン濃縮については,これまでの試験研究の進捗状況をも考慮して各方式の研究開発を行なうが,これらの試験研究に一応の区切りがつくと思われる47年頃において,各方式の研究成果の評価を行ない,可能な限り一方式に研究開発を集中する。
 各方式の評価は,学識経験者により構成される機構を設けて行なうこととする。

(3)軽水炉の使用済燃料の再処理については,将来,第2工場以降,民間に再処理工場の建設,運営を期待し,このため,法改正,廃棄物の処理,処分およびこれにともなう責任体制,環境整備の必要性等についての検討を行ない適切な措置を講ずる。
 高速炉の使用済燃料の再処理については,動力炉開発と併行して自主技術の確立をはかる方向で,その具体策を検討する。

(4)今後のわが国のプルトニウム需給の動向にかんがみ,プルトニウム燃料の有効利用をはかるため,プルトニウムの軽水炉への利用に関する技術の開発を早急に特定総合研究としてとりあげる。この研究開発にあたっては,民間企業の施設および人材を活用することも考慮することとし,あわせて国際協力を推進する。

(5)従来,プルトニウムを中心とした燃料の物量需給に重点をおき,核燃料サイクルに関する調査研究を行なってきたが,今後はわが国において原子力発電の有利性を最高度に発揮できるよう長期的かつ経済性をも加味した総合的な核燃料サイクルに関する試算を行なって,核燃料政策の具体化に資するための基礎資料を得る。

(6)核燃料の民有化を行ない民間による原子力産業の自主的な発展を期待するが,すでに国が賃貸している核燃料については,民有化後も当分の間現行の賃貸方式を継続する。

(7)核燃料に対する保障措置の適用にあたっては,原子力産業の円滑な発展を期するため,査察の効率化,合理化に関する研究開発につとめる。


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