§5 在来型炉の研究開発

 軽水炉等在来型炉については,その国産化や改良の促進に資するため,各種燃料集合体,被覆材,圧力容器,安全系機器等について,経済性の向上および技術的実証性の確立のための研究開発が行なわれた。

(1)燃 料
 燃料国産化のための研究開発は,原研,動燃事業団および民間等において,原研の動力試験炉(JPDR),ノールウェーのハルデン炉,米国の材料試験炉,ベルギーのBR-2炉等を用いた照射試験を中心として行なわれている。
 すなわち,原研において,動燃事業団および民間との共同研究として試作燃料集合体No.1,No.2を各2体製作し,JPDRで照射したのち,照射後試験を行なうこととしている。
 No.1については40年9月に装荷されたが,このうち1体は42年2月に取り出され現在照射後試験が行なわれている。他の1体は現在なお照射中である。
 No.2については,後述するJPDR-II計画に資するため高出力用燃料として,燃料セグメントを取りはずせる可動型と,これができない固定型の各1体が試作された。可動型については,42年3月に装荷されたが同年6月に取り出され,燃料セグメントの組み合せを変えて,再び装荷され,現在照射中である。固定型については,42年6月に装荷されたが,42年10月に取り出され,現在照射後試験が行なわれている。
 原研においては,この試作燃料集合体の照射試験等による国産化研究をすすめるとともに,実用炉に使用する燃料の安全性の実証,製造技術および検査技術の確立を目標として,40年6月以来JPDRの出力密度を2倍にあげ,熱出力9万キロワットの炉に改造するJPDR-II計画をすすめている。(第8章参照)
 また,原研においては,国内の燃料製造技術の向上に資するとともに,JPDR-II計画を円滑に推進するため,ノールウェーのハルデン炉において,試作燃料集合体の照射実験を行なうこととした。このため,現在までに4体のハルデン炉用燃料集合体(JH)が試作され,ノールウェーに送られている。JHNo.1の2体については,42年4月にノールウェーに送られ,42年10月に装荷された。このうち1体は43年8月取出され,44年1月から当地で照射後試験が行なわれており,1体は現在なお照射中である。JHNo.2の2体については43年3月にノールウェーに送られ,43年5月から照射が続けられている。
 民間においては,原子力平和利用試験研究費補助金(補助金)等により,燃料国産化のための加工技術の向上がはかられつつあり,また米国の材料試験炉,およびベルギーのBR-2炉を用いて燃料の照射試験がすすめられ,ペレット燃料,振動充填燃料,バーナブルポインズン入燃料等について,確性試験が行なわれている。さらに,燃料製造の工程にかかわる国内および国際原子力機関(IAEA)の保障措置制度の簡素化と効率化をはかるため,原子力平和利用研究委託費(委託費)により,燃料の加工工程管理システムについてのコード化に関する試験研究等が行なわれた。

(2)被覆材
 被覆管については補助金により,民間において,ジルカロイ薄肉燃料被覆管の製造および材質改善に関する研究,燃料被覆管用ベリリウム合金の開発,薄肉燃料被覆管端栓の抵抗溶接法に関する試験研究等が行なわれた。
 このほか,原研,国立試験研究機関,大学等において,マグネシウム, ジルコニウム,アルミニウム,ベリリウム,ならびにこれらの合金などについて腐食,照射特性等の基礎研究が行なわれた。

(3) 一次系機器
 一次系機器のうち,加圧水炉用蒸気発生器の管と管板の溶接技術,密封型先駆弁付安全弁の試作,ガス冷却炉用蒸気発生器の管群の振動解析等が,民間において補助金により,それぞれ実施された。また,運輸省船舶技術研究所では,原子炉圧力容器用厚板鋼材の脆性破壊に関し,42年度にひきつづき,3,000トン疲労試験装置等を用いて,焼入れ,焼戻し処理されたASTMA302B鋼および高張力鋼(HY-80)の母材の脆性破壊試験が行なわれた。

(4)安全性および安全系機器
 原子炉の安全性に関する研究については,原研において,熱工学的安全性に関し,発熱材のバーンアウト試験,流路沸騰機構,非定常熱特性を考慮した場合のフィン付管の温度応答特性の研究が行なわれ,また,冷却材喪失事故を解明するため,大型モックアップ装置の建設が計画されており,その一環として,2相流臨界実験装置の設計がすすめられている。
 原子炉用圧力容器の安全基準に関する研究については,委託費により,(社)日本溶接協会において,原子炉圧力容器および一次冷却系配管について低サイクル疲労破壊を考慮した構造設計基準や脆性破壊検査基準を確立するに資するの試験および原子炉用ステンレス鋼の肉盛りクラッドの欠陥防止に関する試験研究が行なわれた。
 原子力施設の耐震設計に関する研究については委託費により,(社)日本電気協会において,地盤―建屋―機器―配管の一連の系をモデル化し,その振動特性を松代群発地震を入力として観測し,その解析が行なわれた。
 また,ジルコニウム―水反応および燃料被覆管の破損原因の研究,原子炉内での有機ヨウ素の生成機構および挙動に関する研究が委託費により,(財)原子力安全研究協会において行なわれた。
 このほか,大学,民間等において委託費により,原子力関係施設における作業者の内部被曝線量の営理法の研究,使用済燃料輸送容器の落下衝撃に関する試験等が行なわれた。


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