§4 二国間協力

1 北米関係

 日米両国は,相互の原子力事情に関する理解と協力関係の向上のため,43年7月,第1回目の日米原子力会議をワシントンで開催した。日本側からは,鍋島原子力委員会委員長をはじめ8名,米国側からは,原子力委員会(AEC)のG.T.シーボーグ委員長をはじめ10数名が参加した。日米両国から,それぞれの原子力開発の現状および見とおしが報告され,高速増殖炉,新型転換炉,プルトニウムおよび濃縮ウランの利用供給の問題等,多岐にわたる分野について意見が交換され,とくに高速増殖炉の分野の協力関係を早急に樹立することについて意見の一致をみた。
 その結果,44年3月,液体金属冷却高速増殖炉に関する動力炉・核燃料事業団(動燃事業団)と米国AECとの協力取極めが両者間において調印された。本取極めによる協力は,相互のバランスを考えながら,特定の分野について,情報交換その他の方法により行なうことになっている。
 さらに,新型転換炉関係については,動燃事業団と米国AECとの間で,制御棒等価反応度実験を米国AECのサバンナ・リバー研究所の施設において行なうことについて合意され,44年3月,契約が締結された。
 原研(高崎研究所)では,米国AEC(ブルツクヘブン研究所)との間でエチレンの高重合および炉内放射線化学について研究協力を行なうことについて交渉をすすめていたが,43年4月,契約が締結された。
 また,日米両国政府間においては,日米原子力協力協定にもとづき,核燃料および原子炉の安全性に関する技術研究協力が実施されている。その一環として,第5回日米核燃料専門家会議が43年11月東京において開催され,わが国より9名米国より5名の専門家が参加した。
 以上のほか,原子力委員会は,米国よりバッテル・ノースウェスト研究所所長W.J.ベアー氏および米国AEC原子炉安全諮問委員会のN.J.パラディーノ氏を招へいした。
 ベアー氏は,43年11月に来日し,プルトニウム吸入の生体に与える障害,に関し,また,パラディーノ氏は,44年3月に来日し,原子炉安全に関する問題を中心として,原子力委員会委員および関係専門家との間で意見を交換した。
 また,43年6月には,米国AEC委員G.F.テープ氏が,44年3月には,同じくAEC委員のコスタリオラ氏がそれぞれ来日し,原子力委員会委員と意見の交換を行なった。
 カナダの関係については,43年12月,カナダ原子力公社(AECL)総裁J.L.グレイ氏が来日し,原子力委員会委員と重水炉および核燃料の問題を中心として,意見の交換を行なった。
 動燃事業団では,新型転換炉開発に関し,カナダAECLとの間に,CA-NDUシステムに関する技術情報購入についての交渉をすすめていたが,合意に達し,43年12月,契約が締結された。

2 西欧関係

 英国との協力については,動燃事業団において,新型転換炉開発に資するため,蒸気冷却動水炉(SGHWR)に関する情報購入のための交渉が英国原子力公社(AEA)との間にすすめられていたが,合意に達し,43年2月,契約が締結された。
 また,動燃事業団では,英国AEAのドーンレイ炉において高速増殖炉用燃料要素の照射試験を行なうことについても交渉をすすめていたが,合意に達し,44年3月契約が締結された。
 フラスとの協力については,40年7月にとりかわされた日仏両国政府交換書簡にもとづき,動燃事業団が,フランス原子力公社(CEA)との間に液体金属冷却高速炉に関する一般的な情報交換および技術協力を行なうための協力取極めについて交渉をすすめてきたが,合意に達し,43年12月,同取極めが両者間で調印された。
 また,動燃事業団は,高速実験炉の概念設計および安全性に関する検討評価についても,フランスCEAと協力関係を結ぶことについて交渉をすすめてきたが,合意に達し,43年10月,契約が締結された。
 さらに,フランスCEAのラプソディー炉において,高速増殖炉用燃料要素の長期間照射を行なうための交渉もすすめてきたが,合意に達し,44年3月契約が締結された。
 原研においては,フランスCEAとの間に,放射線化学の放射線グラフト重合,固相重合等,特定の分野について,情報交換および研究者の派遣を含む協力取極めを結んでいたが,契約期限である3年を経過したのを機会に,新たにウッドプラスチック等の分野を加え,期間を43年5月よりさらに3年間延長することについて合意に達し,その旨,書簡交換が行なわれた。
 また,フランスCEAおよび産業界よりなるフランス高速炉産業使節団が,43年9月,来日し,原子力委員会,その他関係者と,とくに産業べースにおける日仏協力の問題について意見の交換を行なった。
 ドイツ連邦共和国との協力については,43年9月,科学技術大臣G.シェトルテンベルク氏が来日し,原子力委員会と会談した。両国は,原子力研究センター間における基礎的研究計画およびその他核燃料確保のための長期政策,エネルギー需要に適合する各種原子炉システムの最適利用等の相互に関心のある事項に関する情報交換を容易にし,かつ,強化することについて合意した。
 欧州原子力共同体(EURATOM)との協力については,原子力委員会は43年10月,同共同体副委員長F.ヘルビック氏らを招へいし,双方における原子力開発政策について意見の交換を行なった。
 以上のほか,44年4月にはスエーデンから同国原子力研究公社理事ラーソン氏らが来日し,原子力委員会と会談し,とくに保障措置の問題について意見の交換を行った。

3 アジア・大洋州関係,その他

 韓国との協力については,かねてから研究生の受入れ等の協力が行なわれてきたが,43年9月には,鍋島原子力委員会委員長が韓国を訪問し,ソウルにおいて金科学技術処長官と会談し,さらに発展がはかられた。この会談において,両国大臣は,両国が,今後,原子力平和利用に関する科学的および技術的情報の交換ならびに専門家の交換により相互協力を行なっていくことに意見の一致をみた。
 台湾との協力については,43年11月,閻原子能委員会委員長が来日し,原子力委員会と会談し,原子力平和利用の問題について意見を交換した。
 タイ国よりは,43年9月タイ国政府および発電会社よりなる原子力発電調査団が来日,原子力委員会をはじめ関係各方面と意見の交換を行なった。
 オーストラリアとの協力については,43年7月オーストラリア原子力委員会(AAEC)委員テイムズ氏,同11月には,AAEC委員兼原子力研究所長オールダー氏が来日し,原子力委員会と,核燃料問題,その他一般問題について意見の交換を行なった。
 以上のほか,43年7月には,ニュージーランドより同国原子力委員会の委員ロップ氏が来日し,また,11月には,南ア連邦より核燃料問題について,南アフリカ核燃料公祉支配人I.S.Aデビリエ氏が来日し,原子力委員会をはじめ関係各方面と,意見の交換を行なった。


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