§2 海外における原子力開発利用の動向
6 その他の原子炉利用

 このように各国においては,高速増殖炉および新型転換炉の開発研究に大きな努力がはらわれているが,このほか,原子力発電の技術的進歩とこれにともなう経済性の向上から,原子炉の多目的利用に対する関心がもたれ,海水脱塩との二重目的プラントやこれを中心とする工業および農工業コンビナートの構想などがあり,米国をはじめ各国でその研究開発についての検討がすすめられている。また,ドイツでは,高温ガス実験炉の成功から,熱源としての原子炉の有利性が注目され,原子炉の製鉄利用の可能性が検討されはじめている。
 また,平和利用面における原子力船の開発については,すでに就航しているソ連のレーニン号,米国のサバンナ号につづいて,世界の原子力第三船としてドイツのオット・ハーン号が完成し,1968年10月,その試験航海が開始された。このオット・ハーン号の建造,運航の経験は,ドイツを中心とする共同体諸国に,原子力船の分野における優位性を確保するものと期待されているが,ドイツでは,こののち,はやくも実用原子力船の建造が計画されており,その意欲的な態度は注目に値いするものがある。


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