§2 海外における原子力開発利用の動向
5 新型転換炉の開発

 このように,高速増殖炉の開発をすすめる一方,各国とも,在来型炉と同等もしくはそれ以上の経済性を有し,かつ,プルトニウム転換比が高く,核燃料の有効利用をはかり得る新型転換炉の開発にも積極的な努力を払っている。
 米国では,新型転換炉の開発については,その炉型は高温ガス炉および重水減速炉にしぼられており,高温ガス炉については1966年に黒鉛減速ヘリウムガス冷却炉のピーチボトム発電所(4万キロワット)を完成し,同型原型炉ともいうべきフォード・セメイント・ブレイン原子力発電所,(33万キロワット)の建設が,1972年の完成を目途として,すすめられている。
 英国における新型転換炉の開発については,同国唯一の水型炉で,1968年2月に全出力運転を開始した蒸気発生重水減速炉(SGHWR)は,その後ほぼ順調な運転が行なわれ,予想どおりの性能が得られている。この炉は,中規模の発電用炉に適用するもので,輸出のための努力も払われている。
 フランスにおいては,新型転換炉として重水減速炉の開発がすすめられており,現在,1968年2月以来,故障のため運転を中止しているが,新型転換炉の原型炉ともいうべき重水減速ガス冷却型炉(EL-4,電気出7万3,000キロワット)が建設されている。1968年10月には,カナダとの間に重水炉に関する5ヵ年間の技術提携がなされた。
 また,ドイツにおける新型転換炉としては,高温ガス炉の開発がすすめられており,この炉は,本格的な熱中性子増殖炉につながること,さらに,製鉄利用への実現性をも含んでいるので,きわめて積極的な姿勢がとられている。AVRのペブルベッド型高温冷却炉(THTR)の建設が決定された。さらに,ドイツの高温炉開発の最終目的であるヘリウムガスタービンを備えた商業用原子力発電所の建設については,1968年初頭,三稜形燃料使用の高温炉と閉サイクル式ヘリウムガスタービンの組合せにより,出力2万5,000キロワットの実験用原子炉KSHの建設が決定された。
 カナダにおける新型転換炉については,重水減水沸騰軽冷却型炉(CANDU―BLW)と有機材冷却炉の2炉型についての研究開発がすすめられており,CANDU-BLWは,近い将来,最も期待できる重水炉と考えられている。
 現在,25万キロワットの原型炉の建設が,ジエントリー・ビレッジ近郊においてすすめられており,1971年完成予定である。有機材冷却炉については,商業炉の建設計画はないが,一応,実験炉(RW-1)ループ内で,基礎的研究が行なわれている。


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