第1章 総論
§1 国内における原子力開発利用の動向

 わが国の原子力平和利用は,研究開発の進展にともない,漸次,実用化に移行する段階にすすみつつあり,とくに原子力発電を中心として,産業化への具体的な見とおしが次第に明らかとなってきた。これとともに,「原子力特別研究開発計画(国のプロジェクト)」として開始された新しい動力炉の開発が本格化したのをはじめ,原子力第一船も進水にいたり,また,食品照射および核融合に関する研究開発が新たに原子力特定総合研究として着手されるに及び,各分野における放射線利用の普及を含め,原子力平和利用の将来における発展が一層具体的に期待されるにいたった。
 さらに,これらの情勢に対応して,改訂された日米,日英両原子力協力協定の発効をはじめ,その他の諸国との交流など,国際協力の新たな局面への進展がみられるようになった。
 原子力委員会は,42年4月に改訂した「原子力開発利用長期計画」(長期計画)の第2年度として,これに示した方向と施策の大綱にもとづき,上述のような情勢の進展に必要な施策を講じるとともに,これにともなう安全確保のための施策の充実をはかった。
 なお,43年度の原子力関係政府予算は,これらの動きに対応して,(第1-1表)に示すように,総額約224億円(文部省関係分を含む)が計上され,前年比29%(50億円)の増となった。
 これにより,動力炉開発計画,原子力第一船建造計画がほぼ計画どおりの進行をみたほか,引きつづき,日本原子力研究所(原研)をはじめとする関係各機関における研究開発の推進がはかられた。


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