II原子力委員会の計画および方針

5動力炉・核燃料開発事業団の動力炉開発業務に関する第1次基本計画

 昭和43年4月4日決定
動力炉・核燃料開発事業団法第25条第1項の規定に基づき,さきに定めた動力炉開発業務に関する基本方針に従い,動力炉開発業務に関する第1次基本計画を下記の通り定める。
 記

1 高速増殖炉

 実験炉は,プルトニウムとウランの混合酸化物系燃料を用いる熱出力約10万キロワット程度のナトリウム冷却型炉を47年度頃に臨界に至らせることを目標として,概念設計,詳細設計をすすめ,引き続き建設に着手する。
 原型炉としては,プルトニウムとウランの混合酸化物系燃料を用いる電気出力20万キロワットないし30万キロワット程度のナトリウム冷却型炉を51年度頃臨界に至らせるものと想定して所要の設計研究をすすめる。
 これらの設計等と並行して,次の研究開発を実施し,その成果を適宜設計および建設に反映せしめる。

(1)炉物理
 日本原子力研究所(以下「原研」という。)の高速炉臨界実験装置を用いて,プルトニウム燃料による実験炉炉心のモック・アップ試験および制御安全棒効果の確認試験を行なう。

(2)ナトリウム工学
 小型のナトリウム・ループ等を用いて,ナトリウムの分析および精製,ナトリウムによる材料の腐食等に関する実験を行なうとともに,ナトリム中での小型機器および材料の試験装置を製作し,実験炉に用いる材料および小型部品の確性試験を行なう。また,流動試験用ナトリウム・ループを建設し,ナトリウム回路の総合試験,燃料の流動試験等を行なう。

(3)主要機器,部品
 遮蔽プラグ,炉心支持板,燃料交換装置等炉体構造部の主要機器等の試作を行なうとともに,これらを試験するための試験装置を建設し,ナトリウム中での流動試験,熱衝撃試験等を行なう。また,これに必要な部分的な構造についての研究を実施し,これらの成果を実験炉用主要機器の製作等に反映させる。
45年度頃から,逐次,原型炉用の大型機器,部品の開発に移行せしめるものとするが,一部機器については早期に予備研究に着手する。

(4)核燃料
 実験炉用のプルトニウムとウランの混合酸化物燃料について所要の試作試験等を行なうとともに,水ループによる予備流動試験,ナトリウム・ループによるナトリウム中での流動試験を行なう。
 また,エンリコフエルミ炉,ドーンレイ炉等国外の高速炉および国内の熱中性子炉により燃料試料の照射試験を行なう。
 上記の研究開発およびその後の研究開発に使用するため,プルトニウム燃料の照射試験施設および加工技術開発のための施設を建設する。

(5)安全性
 実験炉の安全解析,安全防護設備の試験,ナトリウム沸騰現象の解明,ナトリウム―水反応の研究等所要の研究および試験を行なう。

2 新型転換炉

 原型炉としては,初期装荷燃料として微濃縮ウランまたはプルトニウム富化天然ウランを用いる電気出力約20万キロワット程度の重水減速沸騰軽水冷却型炉を昭和49年度頃臨界に至らせるものと想定して,第1次および第2次の設計研究を実施し,事前の研究開発の成果および海外における技術の動向等の評価検討を行ない,原型炉建設の具体的計画について結論を得た場合には引き続き建設に着手する。
 設計研究等と並行して次の研究開発を実施し,その成果を適宜設計等に反映させる。

(1)炉物理
 大型臨界実験装置を建設し,これを用いて炉心核設計に関する定量的データを得る。
 この大型臨界実験装置が完成するまでに炉心核設計に関する定性的データを得るため,既設の軽水臨界実験装置を改造した二領域の臨界実験を行なうとともに,英国等からコード類を購入して炉心設計の評価等に利用する。

(2)熱ループ実験
 大型熱ループを建設し,これを用いて熱水力学上の定量的データを得る。
 この大型熱ループが完成するまでに熱水力学設計に関する定性的データを得るため,既設の小型熱ループを用いて伝熱・流動実験を行なう。

(3)主要機器,.部品等
 ジルカロイ製圧力管と鋼管との接合部,シールプラグ,カランドリア,燃料交換装置,制御棒駆動装置等の部品および主要機器の試作開発を行なう。
 さらに,コンポーネント・テスト・ループを建設し,試作した部品および主要機器について総合的機能の確認試験を行なう。

(4)核燃料
 原型炉用の燃料被覆管,燃料集合体等を試作し,これら試作したものについて,各種の試験および検査を行なう。また,燃料,材料の照射試験を主として原研の材料試験炉を用いて実施する。

(5)安全性
 一次冷却系破断,重水ダンプ機構,液体ポイズン制御方式,非常冷却系等に関する安全性実験を行なうとともに安全性解析を行なう。

3 本基本計画は,昭和42年度から45年度までの期間を対象とし,必要に応じ所要の修正を行なうものとする。


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