§3 試験炉
1動力試験炉

 原研の動力試験炉(JPDR)は,38年10月,わが国ではじめて原子力による発電に成功して以来,ほぼ順調に運転がつづけられ,運転研究,炉特性解析等の実験が行なわれてきた。
42年度は,7月,燃料交換,8月,炉隔離弁用モーターの修理,10月から1月まで定期検査,2月から3月にかけてのストライキとそれにつづく約1ヵ月のロックアウトのため,これらの期間運転が停止され,あるいは出力が低下されたが,43年2月には,はじめて各種国産試験燃料が装荷された。定期検査については,10月,原子炉圧力容器上蓋クラッド部のヘア・クラック検査,11月,原子炉圧力容器の気密漏洩試験,12月から1月にかけて同容器の底部のヘア・クラック検査が行なわれた。
42年度,JPDRを用いての実験は,破損燃料検出試験,ワイヤ照射による中性子束分布測定,原子炉過渡応答特性試験,圧力容器振動特性試験,ノイズ測定による原子炉動特性試験等が行なわれた。
42年度の運転時間は2,629時間,熱出力量は8,558万キロワット時,発電量は3,207万キロワット時であった。
 また,JPDRについては,40年6月,原子力委員会の方針に従い,原研で軽水型炉燃料の国産化技術の確立をはじめ,わが国における軽水型炉技術水準の向上に資することを目的として,高出力密度化計画(JPDR-II計画)が樹立された。
 この計画は燃料の設計,製造,照射および照射後試験ならびに関連技術の研究開発を有効に集約して,JPDRを現在の自然循環方式から強制循環方式,に改造し,熱出力および出力密度をそれぞれ9万キロワット,45キロワット/リットルに倍増させようとするものである。
 この改造計画の推進にあたり,42年3月から安全審査がすすめられているが,本炉は,41年5月の定期検査のさいに圧力容器上蓋にヘア・クラックが発見された経緯もあり,また。42年12月の定期検査においては,炉底部にもヘア・クラックらしきものが認められ,運転を停止し,徹底的に検査が行なわれている。


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