§1 原子力第1船の建造
3建造準備

内閣総理大臣および運輸大臣は,原子力委員会の方針にもとづき,42年3月,「原子力第1船開発基本計画」を改定し,これを原船事業団に指示した。
 原船事業団は,この基本計画の改定に従って,原子力第1船の設計変更を行ない,42年4月,原子力第1船原子炉設置許可を内閣総理大臣に申請するとともに,42年11月,船舶建造許可を運輸大臣に申請した。
 また,原子炉設置許可の対象となる原子力第1船の定係港(付帯陸上施設)の建設地の選定をすすめていたが,42年11月,青森県むつ市下北埠頭部を建設地とすることについて,地元の了承を得た。
 原子力第1船の原子炉設置許可申請にともなう安全審査については,原子炉安全専門審査会において,約40回の会合をもち慎重な審査がすすめられた。同審査会は,定置式の陸上施設と異なり船特有の問題として,船体の耐衝突構造,動揺,振動等の条件下における原子炉特性および船の周辺環境が常に一定ではないなどの問題に対しても十分に検討し,さらに定係港に関する安全性についても審査し,原子力第1船の安全性は確保される旨原子力委員会に報告した。
 原子力委員会は,この報告にもとづき,42年11月,内閣総理大臣に対し,許可の基準に適合している旨答申した。これを受けて,内閣総理大臣は,同月,運輸大臣の同意をえて原船事業団に,原子力第1船原子炉の設置を許可した。
 これより先に原船事業団は,原子力第1船の建造契約締結の作業をすすめ,42年11月,船体部については石川島播磨重工業(株),原子炉部については三菱原子力工業(株)との間に総額約55億6,700万円(船体部約28億9,700万円,原子炉部約26億7,000万円)にのぼる建造契約を締結した。
 この契約は,42年11月,内閣総理大臣の原子炉設置許可および運輸大臣の船舶建造許可により発効し,両社は,それぞれ原子力第1船の建造に着手した。
 なお,原子力第1船は,基本計画に示されているように,国内技術を主体として建造されるが,原子力第1船原子炉部装置の効率的な製作をすすめるため,原子炉(加圧軽水型炉)の製作を担当する三菱原子力工業(株)は原子炉部装置について,設計のコンサルタントを米国のウェスチングハウス社に依頼することとなっている。また,制御棒駆動装置等若干の原子炉関係機器については,米国の関連メーカーから輸入することとなっている。
 今後,原子力第1船は,石川島播磨重工業(株)において船体部の建造がすすめられ,45年5月末に船体部の工事を終え,原船事業団に引き渡されるが,その後は,むつ市下北埠頭先端部に設けられる定係港に回航され,同所で,ひきつづき三菱原子力工業(株)によって原子炉据付,ぎ装工事,機能試験等が行なわれ,47年1月末に完成する予定となっている。


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