§2 核燃料の民有化

 核燃料については,政府は原子力委員会の方針にもとづき,天然ウランおよびトリウムに限って民間の所有を認め,濃縮ウラン,プルトニウム等の特殊核物質は国,または公的機関の所有としてきた。
 しかし,1964年(昭和39年),米国において,特殊核物質の民有化に関する法律が施行され,日米原子力協力協定(日米協定)上,日本政府が特殊核物質を所有する義務は必ずしも必要でなくなった。また,核燃料物質に関する平和利用の保障,安全性の確保のための管理体制等がすでに整備された事情にかんがみ,原子力委員会は,民間による原子力発電が本格化したこの時期に,特殊核物質を民間に所有させることが原子力発電の推進により有効であると考え,41年9月,日米協定の更改にあたっては,特殊核物質の民間所有を認める方針で,安全保障措置等,必要な国内環境の整備をはかるとともに,濃縮ウランの安定した供給の確保と濃縮ウランの購入契約,賃濃縮契約などの取引を民間が直接行ないうるような措置を講ずることとした。
 政府は,原子力委員会のこの方針にもとづき,41年10月の閣議において,遅くとも43年11月までに特殊物質の民間所有を認めることとし,日米協定改訂の準備を行なうことを了承した。その後,政府は,この方針にそって日米協定の改訂をすすめていたが,原子力委員会は,43年7月,新協定が発効したことにかんがみ,7月15日以降,特殊核物質の民間所有を認めることを決定した。


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