第13章 原子力関係予算

 昭和42年度原子力関係予算は,現金額156億円,債務負担行為額56億円である。これを41年度と対比すると,現金額において27億円(21%)の増額を示した。
42年度末の定員は,科学技術庁原子力局および水戸原子力事務所が157名で,41年度末に比較し,増減なし,日本原子力研究所(原研)が2,135名で,126名増,動力炉・核燃料開発事業団(動燃事業団)が776名,日本原子力船開発事業団(原船事業団)が73名で5名増,科学技術庁放射線医学総合研究所(放医研)401名で増減なしとなっている。
 これら42年度末における定員の合計は3,542名で41年度末より215名の増加となっている。なお,動燃事業団は原子燃料公社(公社)(42年9月末の定員は727名で41年度末に比較し35名増)を吸収し,42年10月,発足した。
42年度の予算の主要なものは次のとおりである。

(1) 日本原子力研究所

 原研の予算額は,現金額93億8,000万円であり,このうち政府出資額は,90億4,000万円である。なお,債務負担行為額は24億9,000万円である。
 イ 材料試験炉の建設
 材料試験炉の本体および建屋の建設ならびに照射後試験施設の整備を行なうため,現金額24億3,000万円,債務負担行為額6億4,000万円が計上された。
 ロ 動力炉の研究開発
 内閣総理大臣の定める基本方針および基本計画に沿って,動燃事業団と密接な連携のもとにナトリウム冷却型高速実験炉および重水減速沸騰軽水冷却型原型炉の設計研究,高速炉の炉物理実験,ナトリウム技術の開発等を行なうため,現金額6億3,000万円,債務負担行為額6億2,000万円が計上された。
 ハ 動力試験炉の改造(JPDR-II計画)
46年度計画達成を目途として,従来の自然循環冷却方式を強制循環冷却方式に改め,出力密度を倍増させるため,現金額2億5,000万円,債務負担行為額10億2,000万円が計上された。
 ニ 原子炉施設の運転整備等
 研究用原子炉を活用し,ひきつづき材料試験,しゃへい試験,アイソトープ製造および要員訓練等,これに必要な整備をはかるため,現金額4億7,000万円,債務負担行為額1億9,000万円が計上された。
 ホ 高崎研究所の整備等
 放射線化学の実用化試験および関連研究等を実施するため,現金額1億7,000万円が計上された。
 へ 大洗研究所の整備
 材料試験炉の建設に関連して,取水工事,廃棄物処理施設の建設,放射能監視設備,道路工事等の整備をはかるため現金額3億円が計上された。

(2) 原子燃料公社

 公社の予算額は,現金額16億円,うち政府出資額は,15億3,000万円である。
 イ 使用済燃料再処理施設の設計
46年度操業開始を目途として,主要施設の詳細設計および計画の推進に必要な業務を遂行するため現金額5億8,000万円が計上された。
 ロ プルトニウム燃料の開発
 プルトニウムの熱中性子炉および高速増殖炉への利用に関し,その加工技術および照射試験用試料の加工を行なうため,現金額7,000万円が計上された。
 ハ 核原料物質の探鉱
 国内における探鉱および海外現地調査を行なうため,現金額1億6,000万円が計上された。

(3) 日本原子力船開発事業団

 原船事業団の予算額は,現金額10億3,000万円,うち政府出資額は,7億5,000万円である。なお,債務負担当行為額は10億1,000万円である。
46年度完成を目途に,原子力第1船の建造,付帯陸上施設の建設,乗組員の養成訓練等を行なうため計上された。

(4) 動力炉・核燃料開発事業団

 動燃事業団の予算は,現金額14億5,000万円,うち政府出資額は13億8,000万円である。なお,債務負担行為額は11億6,000万円である。
 原研,民間等関係諸機関の協力を得て,高速増殖炉の開発に必要な大型ナトリウムループ,α-γケーブの建設,プルトニウム燃料の照射試験,重水減速沸騰軽水冷却型原子炉の設計研究等を行なうほか,その業務の一部を関係機関に委託するため計上された。

(5) 放射線医学総合研究所

 放医研の予算額は,現金額6億9,000万円である。放射線障害の防止に関する基礎研究を行ない,とくに,プルトニウムによる内部被曝に関する調査研究および放射線障害の回復に関する調査研究を行なうほか病院部の拡充および放射性廃棄物の海洋処分に関する研究のための施設の建設を行なうため計上された。

(6) 国立試験研究機関

 放射線の利用,原子炉材料,安全性等に関する研究を行なうため,現金額5億9,000万円が計上された。

(7) 試験研究の助成および委託

 在来型炉の設計または製作技術,放射線利用に関する研究等に重点をおいて,民間の研究を助成し,また原子力施設の安全基準および安全評価に関する研究,食品照射に関連する技術等に関する研究を民間に委託するため,現金額3億2,000万円が計上された。

(8) 核燃料物質の購入等

 原研,大学等における原子炉燃料および研究等に使用される核燃料のうち,濃縮ウラン等の購入,借入れなどのため現金額5億円,債務負担行為額9億2,000万円が計上された。

(9) 放射能測定調査研究

 環境,食品,人体等に関する放射能の調査および研究ならびに原子力艦の入港にともなう放射能調査を行なうため,現金額1億2,000万円が計上された。

(10) 原子力局

 原子力施設の安全確保,原子力啓発普及,日米研究協力,各種調査企画等を従来にひきつづき,充実するほか,IAEA主催の国際会議の招致,原子力利用状況の動態調査等を行なうため現金額7,000万円が計上された。

(11) 水戸原子力事務所

 放射線監視に必要な施設の整備等を行ない,当該地区における原子力施設の安全対策の強化をはかるため現金額800万円が計上された。

(12) 理化学研究所

 サイクロトロンの完成にともない,サイクロトロンを用いた研究,バンデグラフの建設を行なうほか核融合反応,放射線利用等に関する研究を行なうため現金額2億2,000万円,債務負担行為額2,000万円が計上された。

(13) 原子力発電所立地調査

 原子力発電所の立地調査として,新たな地点について地質および気象の現地調査を行なうため,現金額500万円が計上された。

(14) 東海地区原子力施設地帯整備

 茨城県東海村周辺地区について,原子力施設が集中している特殊事情にかんがみ,道路の整備等に必要な経費として国庫補助額1億7,000万円が計上された。

(15) 各省庁行政費

 関係各省庁が行なう原子力発電所,または原子力船に対する規制等に必要な行政費は,それぞれの省庁の予算に計上されているが,その総額は,現金額1億4,000万円である。


目次へ          1.1原子力委員会(43.6.30現在)へ