§2 国際条約
1核兵器の不拡散に関する条約

 核兵器の不拡散に関する条約は,国連の18カ国軍縮委員会で検討されていたが,42年8月,その条約草案が米ソ両国から同委員会に提出された。
 この草案は,核兵器もしくは他の核爆発装置の不拡散のための核保有国および非核保有国の義務,平和利用の権利の保障,条約の改正手続等について規定しているが,国際査察規定に関する第3条(国際管理)は空白のまま提出された。
 この草案に対し,わが国の原子力委員会は,42年8月,要約次のとおり意見を出した。
(1)空白となっている国際管理条項に重大な関心を持っており,平和利用に対する査察については,核保有国と非核保有国とを問わず平等に査察を受けること,査察対象は核物質のみに限ることおよび査察の実施は,原子力施設の経済的運営に支障を与えないようにすること。
(2)核兵器の開発から生ずる平和利用の技術も全締約国に提供すること。
(3)核爆発の平和利用について,当面わが国での開発は考えていないが,将来軍事利用と平和利用が区別できる段階になれば,平和利用の研究開発を行なう保証を得ること。
 その後,米ソ両国は,国際管理条項を加え,また他の諸国の要望にもとづき,43年1月に修正案を提出した。これらに対し,原子力委員会は43年2月,要約次のとおり意見を表明した。
(1)今回の案は,前回に比べかなり改善されていること。
(2)しかし,核兵器開発から生ずる副産物としての技術は,平和目的に利用されるものは全締約国に提供すべきこと。
(3)核爆発の平和利用に関しては,将来,その権利を適当な方法で確保すること。
(4)保障措置に関しては,核保有国にも適用すぺきこと。
(5)本条約連用審議のための会議を5年ごとに開催するのが望ましいこと。
 国連18カ国委員会は,米ソ両国より提出された修正案に対し,各国からの意見を付して,これを国連総会に提出した。
43年4月より開かれた国連総会では,核兵器の不拡散に関する条約が審議され,6月,同条約は可決承認された。


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