§2 原子力発電所の建設

 原子力発電は,近年,技術進歩とともに,経済性が著しく向上し,わが国においても,その発電コストは,近い将来,重油専焼火力発電に十分競合しうると見こまれるにいたった。原子力委員会は,42年4月に改訂した「原子力開発利用長期計画」において,原子力発電は,このように経済性向上の見とおしが明らかであること,さらに石油に比較して,燃料の輸送および備蓄が容易であり,かつ,外貨負担および供給の安定性の面から有利であること等の理由から,これを「低廉な準国内エネルギー源」として性格づけ,その長期の開発見とおしを明らかにした。
 一方,電気事業者においても,原子力発電に対する期待は急速に高まっており,積極的に原子力発電所の建設に取り組んでいる。
 日本原子力発電(株)が茨城県東海村に建設した東海発電所(コールダーホール改良型炉16万6,000キロワット)は,42年7月,全出力営業運転を開始した。また同社が,福井県敦賀市に建設する敦賀発電所(沸騰軽水型炉32万2,000キロワット)は,41年4月に設置が許可され,44年度完成を目途に建設がすすめられている。
 東京電力(株)(東電)が福島県双葉郡に建設する福島原子力発電所(沸騰軽水型炉40万キロワット)および関西電力(株)(関電)が福井県三方郡に建設する美浜発電所(加圧軽水型炉34万キロワット)は,ともに41年12月に設置が許可され,45年度完成を目途に建設工事がすすめられている。
 また,東電および関電の両社においては,上記地点に2号炉としてそれぞれ78万4,000キロワット,50万キロワットの大容量の軽水炉を建設することとし,その設置の許可を申請したが,43年3月および5月に,内閣総理大臣によりその設置が許可され,建設が開始された。
 さらに中部電力(株),中国電力(株),北陸電力(株),九州電力(株),東北電力(株)の各電力会社においては50万キロワット級の原子力発電所建設計画の検討がすすめられている。


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