第9章 試験研究用原子炉等の整備,運転
§3 試験炉

2 材料試験炉

 材料試験炉(JMTR)は,動力炉の国産化に資するため,原子炉材料と燃料の各種照射試験を行なうことを目的として原研に設置することが,38年,原子力委員会で決定された。設計製作はすべて国産技術によることとし,国内原子力産業5グループの共同製作によって建設されることとなった。
 原研から提出された「JMTRの設置に関する書類」にもとづいて,原子力委員会において安全審査が行なわれ,40年7月,内閣総理大臣からJMTRを茨城県東茨城郡大洗町に設置することが承認された。
 JMTRは,熱出力最大5万キロワットの90%高濃縮ウラン軽水減速軽水冷却タンク型で,燃料は改良ETR型燃料要素を用い,装荷量はウラン235で6.5キログラムである。照射実験装置としては,燃料領域,反射体領域にループが7本のほか,ラビット管,キャプセルホルダーなどが多数挿入できるようになっている。また,JMTR運転の基礎実験を行なうため,材料試験炉臨界実験装置(JMTRC)がJMTR建屋内に設置される。これは,従来,原研東海研究所JRR-4のプール内に設けられ,基礎実験が行なわれていたものをJMTR建屋の完成をまって42年7月に移設するものである。
 建設工事は40年8月に着手され,炉建屋は42年2月に完成した。また,他の系統の施設もこれと平行して工場製作がすすめられた。ステンレス製の圧力容器は直径約3メートル,高さ約10メートルの円筒型で9 炉プールへの搬入が42年1月に行なわれた。炉心構造物,炉心要素,照射実験装置など,圧力容器内に設置されるものについては,41年度中にモックアップ試験装置を用いて静的試験,動的試験を行なって,設計製作方法を決定したのち,工場製作に着手した。1次冷却系,2次冷却系等の主要機器も42年3月までに工場製作を終了しており,42年4月以降,現地据付工事が行なわれる予定である。
 42年度には,燃料管理室,居室,実験室,排気塔,ホットラボラトリーの工事などがすすめられ,43年3月に燃料装荷,臨界の予定である。
 JMTRに設置する最初の照射孔として水冷却照射ループ(OWL-1,大洗ループNo.1)の計画が確定して,42年2月,原研から「OWL-1設置に関する書類」が提出され,原子力委員会において安全審査中である。同ループは,主として水冷却型動力炉の燃料,材料の照射実験を行なうもので,最高圧力は50キログラム/平方センチメートル,最高温度は320°Cで,PWR型,BWR型のいずれの冷却形式でも実験が可能である。


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