第9章 試験研究用原子炉等の整備,運転
§3 試験炉

1 動力試験炉

 原研の動力試験炉(JPDR)は,38年10月,初発電に成功して以来,試験運転による発生電力は東京電力(株)の系統を通じて送電してきた。39年3月,制御棒シール部故障のため運転が中止され,補修後調整運転をへて,40年5月,通商産業省(通産省)から使用認可証が交付された。
 41年度には,ひきつづき同炉は順調に運転がつづけられ,1,000時間連続運転が行なわれ,運転研究,炉特性解析の実験等が行なわれた。これらの実験は,破損燃料検出実験,制御棒点検,圧力容器モニタリング, ボイド測定,発電機トリップ試験などについて行なわれた。
 41年4月に復水器の海水漏洩があったが,補修して直ちに運転を再開した。
 5月なかばから7月にかけて通産省による定期検査が行なわれた。8月には,低出力時における炉物理実験が行なわれた。出力運転は,圧力容器蓋内面フラッド部のヘアークラック修理のため,やや遅れて9月に再開された。
 この間,燃料および材料照射のための照射設備の設置および高出力密度化計画(JPDR-II計画)のための新型燃料の照射について,それぞれ原子力委員会において安全審査が行なわれ,9月に承認された。
 9月以降連続して運転が行なわれ,この間に国産スウェージ燃料,JPDR-II用試作燃料などが,炉心に装荷され,照射研究が行なわれた。42年2月初めからは自主定期検査のため,約2カ月運転を停止した。
 41年度におけるJPDRの運転実績は,運転時間3,230時間,発生電力量421万キロワット時であった。
 JPDR-II計画については,42年3月に原研から安全審査のための書類が提出され,原子力委員会において審査がはじめられた。この計画は,現在のJPDRを改造して,熱出力および出力密度をほぼ2倍のそれぞれ9万キロワット,45キロワット/リットルに上昇させるものである。このため,高出力燃料を使用することとし,冷却方式を強制循環方式に改造するものである。


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