第8章 基礎研究および核融合

§4 生物分野における基礎研究

 生物の分野では,遺伝学,生理学,医学,農学等に関して,生体の機能の研究,放射線の生物学的影響を解明する研究等が,大学,国立試験研究機関等において行なわれている。
 41年度には,遺伝学においては,細菌等を用いて,遺伝子突然変異,染色体突然変異等についての研究,染色体活動サイクル各期に対する放射線の障害および回復機構についての研究等が行なわれた。
 生理学においては,生物体の栄養,生理,代謝の研究をはじめ,細胞の放射線感受性についての研究等がすすめられた。
 生化学においては,酵素の機能発現に関する研究等が,分子生物学においては,DNAの構造に関する研究等がすすめられた。
 農学においては,穀物の貯蔵時における酵素効果,植物等の育種の研究,家畜疾病に対する生理学的,病理学的研究等が行なわれた。
 医学においては,新抗結核薬の抗結核作用とその二重標識による生体内代謝の解析,高血圧の成因とその治療に関する研究,脳疾患の診断に関する研究,発がん機構の分子生物学的研究等が行なわれた。
 放射線の生物学的影響についての研究は,高エネルギー放射線による人体障害の生成および回復機構の特異性に関する研究をはじめ,高等動物における放射線損傷の回復に関する研究,神経系に対する放射線障害の発生に関する研究,被曝線量と悪性腫瘍,白血病の誘発との相関関係についての研究等が大学,科学技術庁放射線医学総合研究所等において行なわれた。


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