第7章 放射線利用
§2 放射線利用に関する研究開発

5 食品照射に関する研究開発

 食品の輸送や貯蔵中の腐敗,虫害,発芽等による損失を防止することは,食品流通の安定化をはかるうえにきわめて大きな寄与が期待されるが,その対策の一つとして,食品の放射線照射による保存性の向上が注目されてきた。食品照射に関する研究は,すでに10年前から大学,国公立試験研究機関,民間企業において行なわれてきたが,これらの研究は必らずしも計画的に行なわれているとはいえなかった。
 原子力委員会は,このような事情を勘案し,40年11月,食品照射専門部会を設置し,食品照射に関する研究上の問題点である食品としての適性,照射技術,経済性等について総合的な立場から研究体制を整備し,計画的に研究の促進をはかるため,その推進方策について検討することとした。
 食品照射専門部会では,海外で照射食品としてすでに実用化されている馬鈴薯,玉ねぎについて,あるいは,わが国独自の観点から開発すべき米等の品目について,それぞれ小委員会を設け,研究推進方策の審議を行なった結果,41年7月,原子力委員会に馬鈴薯,玉ねぎおよび米に関する研究推進の方策について中間報告を行なった。
 原子力委員会は,この報告を検討した結果,馬鈴薯,玉ねぎ発芽抑制に今後の実用化が期待できるとして,42年度を初年度として,3カ年計画で組織的に研究をすすめることとした。
 また,わが国特有の研究開発課題である米の殺虫,殺菌に関しても,馬鈴薯,玉ねぎの発芽抑制に関する研究と併行してすすめることとした。
 その後,同専門部会では,その他の品目に関する研究推進の方策について検討をすすめるとともに,共同研究施設について,審議をすすめている。


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