第7章 放射線利用
§2 放射線利用に関する研究開発

4 放射線化学に関する研究開発

 放射線を化学反応に利用する放射線化学は,新物質の合成や改良にきわめて有望なものと考えられ,数年前から実用化のための研究が行なわれてきた。
 放射線化学の研究開発センターとして,37年度に設置された原研高崎研究所では,大学,国立試験研究機関,民間企業等と密接な協力のもとに,有望な基礎研究を工業化するため,各種の中間規模試験を実施している。
 施設面では,コバルト-60,30万キュリー線源,1号加速器(変圧器型),2号加速器(コッククロフト・ワルトン型)の整備が終り,42年3月には,3号加速器(大出力エックス線発生装置)が完成した。
 また,原研高崎研究所の研究開発に関連した基礎研究を充実するため,日本放射線高分子研究協会大阪研究所が,42年6月,原研に移管され,新たに原研高崎研究所の大阪研究所として発足することとなった。
 40年度に,攪拌式反応装置を用いて中間規模試験を行なったエチレンの気相高重合については,反応生成物の粘着性のため,連続重合に適さないので,41年度には,管系連続反応装置に変えるなど,反応装置の改良を実施し,良好な結果を収めている。
 また, トリオキサンの放射線固相重合については,41年度に,2号加速器を用いて中間規模試験を行ない,耐熱性,耐摩耗性にすぐれた重合生成物をえている。
 このほか,高崎研では,プラスチックスの放射線改良,放射線反応機構の解明,化学工学的問題の解決,水相―気相放射線化学反応,パルス照射法等の研究がすすめられているが,41年度には,クリプトン―85ガスを水相反応の線源とする研究が新たに開始された。
 国立試験研究機関では,工業技術院の試験研究機関を中心として,放射線化学の応用面における研究開発が行なわれてきた。
 名古屋工業試験所では,41年度に,3万5,000キュリーのコバルト-60照射施設の建設を終り,放射線高分子および低分子化学,放射線照射効果,粒子加速装置の改良開発など,広範囲の研究を行なっている。そのほか,東京工業試験所における放射線テロメリゼーション,大阪工業技術試験所における有機触媒を用いる高分子化学,繊維工業試験所における繊維のグラフト重合,資源技術試験所における石油化学反応への放射線照射効果,農林省林業試験場における木材-プラスチックスの研究等がすすめられた。


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