第7章 放射線利用
§2 放射線利用に関する研究開発

3 工業利用に関する研究開発

 工業利用に関する研究は,ゲージング利用,トレーサー利用等における利用技術の高度化のため,大学,国公立試験研究機関,民間企業においてすすめられている。ゲージング利用については,完全自動制御の目標のもとに,計測の信頼性と計測値の伝達手段の改善等に関する研究が,大学,国公立試験研究機関,民間企業において行なわれている。
 ラジオグラフィーについては,新たに中性子ラジオグラフィーが注目され,その適用範囲や現像方法などの基礎的な研究が国公立試験研究機関,民間企業等において検討されはじめた。
 また,放射化分析に関しては,放射化分析に適する核種の選択,可搬式中性子発生装置の開発等の研究がすすめられている。
 古くから放射線利用の研究開発を行なってきた理化学研究所では,41年度において,研究所を埼玉県大和町に移転したが,数年来の課題であった160センチメートルの新しいサイクロトロンも,41年10月,完成し,同年12月,所定のイオン加速に成功した。
 このサイクロトロンは,多重価イオンを加速することができ,原子核物理学等の基礎研究に利用されるばかりでなく,ラジオアイソトープの生産等にも利用される計画であり,その成果が期待されている。
 日本原子力研究所(原研)では,茨城県大洗町にラジオアイソトープ利用開発棟の建設をすすめていたが,42年3月完成し,ラジオアイソトープ工業利用に関する研究開発を行なうこととしている。
 科学技術庁原子力局は,公立試験研究機関,民間企業における研究を助成するため,リチウム・ドリフト・ゲルマニウムガンマ線検出器に関する試験研究,パルス状放射線の測定および利用に関する試験研究等に対し,41年度においても原子力平和利用研究補助金および委託費の交付を行なった。


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