第7章 放射線利用
§1 各分野における利用

2 農業利用

 農業面における利用は,農業,農業土木等の各部門において,トレーサー利用,照射利用,放射化分析利用が行なわれている。
(1) トレーサー利用では,ラジオアイソトープで標識した肥料および農薬の開発がすすめられた結果,これらを利用して,肥料,農薬の効率を測定する研究がすすみ,施肥法の改善,農薬の使用効果の増大等に大きな成果をあげている。また,農業土木の部門においては,従来の方法では,浸透水の経路,流速などを明確にすることが困難であったが,ラジオアイソトープをトレーサーとして水の行動を追跡することが可能となり,耕地の用・排水の改善や水質調査,鉱毒水調査等に広く用いられ,水資源の開発とその合理的な使用に寄与している。
(2) 照射利用では,植物等の放射線照射による突然変異を利用した品種改良の研究が,農林省放射線育種場をはじめ農林省農業技術研究所(農技研),大学等ですすめられた結果,種子照射によって水稲では「レイメイ」,大豆では「ライデン」などの,新優良品種が育成され,実際に栽培されている。
(3) 放射化分析については,従来の化学的分析法では,土壤,動植物,河川等に存在する微量成分の分析が困難であったが,放射化分析を採用することにより,動植物における微量栄養成分,残留農薬,水質汚濁による農作物の被害等の研究が容易となり,その研究結果が応用され成果をあげている。


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