第5章 核燃料

§2 核燃料の所有方式

 核燃料の所有方式については,政府は,原子力委員会の方針にもとづき,天然ウランおよびトリウムに限って民間の所有を認め,濃縮ウラン,プルトニウム等の特殊核物質は原則として,国または公的機関の所有としていた。
 一方,1964年(39年)米国において通称「特殊核物質の民有化に対する法律」が施行され,このため,日米原子力協力協定(日米協定)上,日本政府が特殊核物質を所有する義務は必らずしも必要でなくなった。また,核燃料物質に関する平和利用の保障,安全性の確保のための管理体制等がすでに整備された事情にかんがみ,原子力委員会は,民間事業者による原子力発電が本格化したこの時期に,特殊核物質を民間に所有せしめることが原子力発電の推進により有効であると考え,特殊核物質の民有化の方針を固め,日米協定の改訂,民有化にあたっての措置等について,検討を行なってきた。
 41年9月,原子力委員会は,近くその有効期限が満了する日米協定の改訂にあたり,特殊核物質の民間所有を認める方針で,安全保障措置等,必要な国内的環境の整備をはかるとともに,濃縮ウランの安定した供給の確保と,濃縮ウランの購入,プルトニウムの処分等を民間が直接行ないうるような措置を講ずる方針を決定した。
 政府は,原子力委員会のこの方針にもとづき,41年10月の閣議において,核燃料の民有化について,遅くとも43年11月末までに特殊核物質の民間所有を認めることとし,濃縮ウランの確保,民間人による濃縮ウランの購入等の取引きを直接行ないうるように,日米協定改訂の準備を行なうことを了承し,同協定改訂のための検討を行なうこととしている。


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