第4章 動力炉開発
§5 在来型導入炉の研究開発

4 安全性および安全系機器

 冷却材喪失事故時における軽水炉用燃料被覆管の安全性に関する試験が,委託費により,関係各機関および民間企業の共同により,前年度にひきつづいて,とくに事故後の燃料被覆管の安全性に対するジルカロイの水素化物の影響について行なわれている。
 原子炉用圧力容器の安全基準に関する研究については,ノズル取付部および支持スカート取付部の構造強度および高応力疲労ならびに圧力容器の製造熱履歴による脆化についての試験研究が,38年度からひきつづき,(社)日本機械学会および(社)日本溶接協会において,委託費により実施された。
 わが国には,炉心スプレイ,格納容器スプレイ,圧力抑制装置等,安全機器の性能限界を評価するために必要な資材が不足しているので,原子炉の安全評価をより適正に行なうことを目的として,38年度から,委託費により,これらに関する研究が継続して実施されてきた。41年度には,軽水炉の炉心スプレイ冷却効果,冷却材喪失事故時における冷却水の流水現象,圧力抑制装置の機能,格納容器スプレイによるよう素およびよう素化合物の水洗効果,活性炭素フィルタによるよう素,有機よう素の吸着性能等に関する研究が,民間企業において実施された。
 耐震性に関する研究は,わが国には地震が多いため,耐震性は原子炉設置の際に重要な問題となるので,この種の研究を看過することができない。このため,41年度には,原子炉施設構築物の地震時における振動特性に関する試験研究が(社)日本建築学会において,原子炉格納容器の耐震設計のための振動解析法に関する試験が(社)日本機械学会において,それぞれ実施された。
 軽水炉の熱設計において必要なバーンアウトに関する研究は,(社)日本機械学会および民間企業において実施された。さらに,十字型制御板の等価反応度の計算法,沸騰水型原子炉炉心の熱流速向上,原子炉1次冷却系の流量調節弁の製作,ガス冷却型動力炉用燃料要素取扱装置の製作等に関する研究が,補助金により,民間企業において行なわれた。
 原研においては,原子炉の安全性に関する研究として,炉工学的安全性に関し,発熱体のバーンアウト試験,流路沸騰メカニズム,非定常熱伝達特性を考慮した場合のフィン付管の温床応答特性の検討が行なわれ,また,冷却材喪失事故対策に関し,大型モックアップの仕様を検討し,それにもとづき二相臨界流実験装置の設計がすすめられている。さらに,核分裂生成ガス放出に関しては,照射済み二酸化ウラン燃料の加熱により放出されるキセノン―133等の測定等,また,軽水型原子炉施設に関しては,コンクリートの照射損傷実験,遮蔽性能実験,格納容器の設計および耐震構造の研究が,それぞれ行なわれた。


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