第4章 動力炉開発

§1 経緯

 原子力委員会は,わが国の国情に適した動力炉の開発について, 昭和38年以来,動力炉開発懇談会を開催し,総合的な見地からその推進方策に関し検討を行なってきたが,41年5月,その検討結果にもとづき,動力炉開発の基本方針を内定した。
 この方針は,動力炉の研究開発を国のプロジェクトとして自主的に推進し,高速増殖炉および新型転換炉をそれぞれ60年代の初期および50年代の前半に実用化することを目標としたものであり,さらに動力炉開発の実施機関として,42年度を目途に特殊法人の新設を行なうこととし,これと関連して既存の原子力開発機関の業務について所要の検討を行なうこととしたものである。
 なお,原子力委員会は,41年6月,動力炉の開発を早期に実施に移すため,新特殊法人が発足するまでの暫定組織として,動力炉開発臨時推進本部(推進本部)を日本原子力研究所(原研)に設置し,研究開発計画の立案,所要資金の見積り等の作業を行なわせることとした。同推進本部は,原研理事長を議長とし,動力炉の開発に関し,学識経験を有する者7名および原子燃料公社理事長の計9名をもって構成され,また,本部委員を補佐して各種資料の作成等を行なわせるため,関係各界の専門家を幹事に委嘱して審議を行なうこととした。推進本部では,高速増殖炉および新型転換炉の開発に関する42年度の事業計画案等について検討が行なわれた。
 一方,41年8月,原子力局に,動力炉開発に関する行政事務を強化するため,原子炉の研究開発に関する方針の企画,立案に関する事務をつかさどる原子炉開発課が新設された。
 原子力委員会は,42年度予算において,41年8月に決定した「昭和42年度原子力関係予算の見積り方針について」のなかで,動力炉開発のための事業団の新設を要求するとともに,予算額については,計画的に研究開発をすすめるためには42年度において約45億円が必要であるが,前年度予算額の130%を限度とする要求枠の関係上,その一部の約13億円のみを計上することとした。残りの約32億円については,自由民主党の政策予算として枠外要求されることになった。
 42年2月,予算折衝の過程において,「事業団の新設は,既存の特殊法人の改組によるのでなければ認めない」という政府の方針もあり,原子力委員会は,この線にそって検討した結果,原子燃料公社(公社)を改組し,公社の事業を引継ぎ,動力炉開発のための新事業団を設立することとした。42年度政府予算において動力炉・核燃料開発事業団(新事業団)の設立に必要な経費が計上され,動力炉開発関係の予算額は,枠外要求分も含め現金約16億円と国庫債務負担行為額約26億円が計上された。
 新事業団は,42年10月に発足することを目途にその準備がすすめられている。


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