第2章 原子力開発利用長期計画の改訂

§3 新長期計画の概要

 新長期計画は,総論において,まず長期計画改訂の背景および原子力開発利用の基本的な考え方を述べ,これにもとづき,各分野における原子力開発利用のすすめ方,研究開発の一般方針,原子力産業の育成等について,その考え方と施策の大綱を示した。また,各論は,原子力発電,動力炉開発,核燃料,原子力船,放射線利用,核融合,安全対策,基礎研究,人材養成および科学技術情報の交流の10項目をもって構成し,解決すべき主要な問題点と具体的な施策の方向を示した。
 なお,この新長期計画は,60年度までに及ぶ約20年間を展望しつつ,50年度までの約10年間をその対象とした。

 1 基本的な考え方
 原子力開発利用の基本的な考え方として,今日,わが国の原子力開発利用が産業化,実用化への移行段階にあることにかんがみ,従来から堅持してきた基本的な理念を含め,次の4点を示した。
(1) 平和利用の維持
(2) 自主性の確保
(3) 長期的計画的推進
(4) 国民全体の利益の重視

 2 新長期計画における主要事項
(1) 原子力発電については,60年度におけるその規模を3,000万ないし4,000万キロワット,50年度における規模を600万キロワットと見こむことは妥当であると考える。
(2) 動力炉開発については,わが国のエネルギー政策,科学技術水準の向上等の観点から,在来型導入炉の国産化をすすめるとともに,新しい動力炉の開発を国のプロジェクトとして強力に推進する。その開発の主体として,新たに動力炉・核燃料開発事業団を設立する。
(3) 核燃料については,60年度までに約9万トンの天然ウラン精鉱の所要量が見こまれるが,その安定かつ低廉な供給を確保するため,国内において核燃料サイクルを確立するとともに,海外ウラン資源の確保等の適切な措置を講ずる必要がある。
(4) 原子力船については,その実用化の見とおしから,原子力第1船の建造を推進するとともに,その成果を生かし,40年代後半に実用原子力船を建造することを目途に,これに必要な船用炉の改良研究を推進する。
(5) 放射線利用については,各分野における研究開発をすすめるとともに,その利用の一層の普及をはかる。
(6) 核融合については,従来の基礎研究の初期的段階からさらにすすんで,核融合を明確な目的とする総合的な研究開発を順次計画的に実施する必要がある。このため,早急に,その推進方策を検討する。
(7) 安全対策については,さらに実証的な研究をすすめ,より具体的,合理的な安全基準の整備をはかる等,原子力の実用化に対応した安全対策の確立をはかる。
(8) 研究開発のすすめ方としては,基礎研究を重視し,その充実をはかるとともに,とくに重要な研究開発課題について,原子力特定総合研究あるいは原子力特別研究開発計画(国のプロジェクト)として,関係各界の密接な協力のもとに推進する。
(9) 原子力産業については,欧米に比べ,いまだその産業基盤は弱体であるので,今後とも過当競争の悪影響を生じないよう考慮しつつ,その育成をはかる。
(10) 人材養成については,今後,10年間に,さらに約1万3,000人ないし1万9,000人の科学技術者が新たに必要であると見こまれる。このため,大学の一層の充実が期待される。


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