第1章 総論

§5 核燃料

 原子力委員会は,今後の原子力発電の進展とともに,必要とされる核燃料の低廉かつ安定な供給とその有効利用をはかることの重要性にかんがみ,長期計画において,核燃料政策に対する基本的な考え方を明らかにした。
 核燃料の所有方式については,米国において,1964年(39年),特殊核物質民有化の措置が決定されたこともあり,原子力委員会は,わが国においても,民間企業の責任にもとづく自主的な活動を促進するため,特殊核物質を民有化する方針を固めた。軽水炉に必要な濃縮ウランを確保するため日米原子力協力協定の改訂にあたり,特殊核物質の民間所有を認めることとし,安全保障措置等必要な国内的環境の整備をはかるとともに,濃縮ウランの安定した供給の確保とその購入等の取引を民間が直接行ないうるよう,41年9月,必要な措置を講ずる方針を決定した。政府は,この方針を閣議において了承し,これにもとづき,日米原子力協力協定改訂の準備を行なうとともに,民有化にあたっての措置等,その実施方策の検討をすすめている。
 ウラン資源の確保については,ひきつづき国内資源の把握につとめるとともに,海外のウラン情勢の的確な調査を行ないつつ,世界の大勢に遅れないよう早期に探鉱開発の実施,長期購入契約の締結等,ウランの低廉かつ安定な入手をはかるための措置を講ずる必要があるとの基本的な考え方を明らかにした。42年1月,原子燃料公社により,カナダ,オーストラリアにそれぞれ調査団が派遣された。このほか,民間においても,鉱業界から42年3月,カナダ,アメリカに調査団が派遣され,さらに電力業界からも,42年3月,欧米諸国に独自の立場で調査団が派遣されるなど,海外ウラン資源の確保に対し積極的な気運が高まってきた。
 加工事業については,原子力発電の進展にともない,核燃料の需要見とおしが明確になってきたことなどから,民間企業から加工事業の許可申請が提出された。
 また,使用済燃料の再処理については,これを国内において行なうこととして,原子燃料公社において,46年度完成を目途に,その詳細設計がすすめられている。
 原子力委員会は,長期計画に示した核燃料に関する基本的な考え方に関し,さらにその具体的施策の確立と推進に資するため,42年6月,関係各界および学識経験者からなる核燃料懇談会を開催し,42年度中に一応の結論をうることとして審議をすすめている。


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