第10章 原子力施設の安全対策

§1 放射線審議会

 放射線審議会は,各省庁が定める放射線障害の防止に関する技術的基準の斉一をはかることを目的として総理府に設置されている。
 放射線障害の防止に関する技術的基準を策定するに際してとるべき基本方針は,放射線関係従事者および一般国民の受ける放射線の線量を,放射線障害を及ぼすおそれのある線量以下とすることが定められており,同審議会は,この基本方針にもとづいて,関係行政機関の長からの諮問に応じて答申し,また,関係行政機関の長に対し,必要に応じて意見の具申を行なっている。
 41年度に行なわれたこれらの諮問および答申には,次のものがある。
(1) 災害対策基本法にもとづく防災業務計画中に記載する「放射性物質の大量放出事故に対する応急対策の放射線レベルについて」の内閣総理大臣の諮問に対する答申
(2) 核原料物質,核燃料物質および原子炉の規制に関する法律にもとづく,「原子炉の設置,運転等に関する規制等の規定に基づき,許容被曝線量等を定める件の一部改正について」の科学技術庁長官の諮問およびこれに対する答申
(3) 工業標準化法にもとづく「自発光安全標識板工業標準」のうち,放射線障害防止に関する技術的基準に関する通商産業大臣の諮問
 これらのうち,(1)の答申は,災害対策基本法にもとづき,地域ごとに作成される地域防災計画において定めるべき応急対策発動のための放射線レベルの指標線量として,原子炉の事故にともなう公衆の退避に関し,全身の外部被曝に対しては25ラド,よう素による甲状線の内部被曝に対しては150ラドとしている。この指標線量は,地域の環境条件等の諸要因にもとづく放射線以外の損害をも考慮しており,地域ごとに設定されるべき放射線レベルは,この指標線量を上限値として,実情に即して可能なかぎり低く定めるべきであるとしている。(2)の答申は,さきに同審議会が行なった国際放射線防護委員会(ICRP)の1962年勧告に関する意見具申にそって,「原子炉の設置,運転等に関する規制等の規定に基づき,許容被曝線量等を定める件(科学技術庁告示第21号)」の一部改正を行なうため答申したものである。
 また,(3)の諮問は,40年度に改正し,41年4月から施行された「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(放射線障害防止法)施行令について,自発光性の塗料を使用した鉱工業のうち,放射線障害の防止に関し安全と認められるものは,放射線障害防止法の規制の対象外となったため,自発光安全標識板工業標準を制定するために諮問されたものである。


目次へ          第10章 第2節(1)へ