II 原子力委員会の計画および方針

2 昭和40年度核原料物質探鉱計画

(昭和40年3月10日
原子力委員会決定)

 昭和40年度における核原料物質の探鉱については,前年度に引き続き,主として堆積岩地域を対象として行なうこととする。探鉱の実施にあたっては,通商産業省工業技術院地質調査所がカーボーン,地質鉱床概査等によりウラン鉱賦存の状況について基礎的な調査を行なうとともに,原子燃料公社が地質調査所の調査による有望地区に対して,鉱床精査,試すい探鉱,坑道探鉱等を実施し,効果的に国内ウラン資源の実態を明らかにすることとする。

1.地質調査所の行なう探査
 地質調査所においては,昭和39年度までにウラン鉱賦存の可能性のある地域のうち約180,000平方キロメートルについて放射能強度分布概査を実施した。本年度は予算約3500万円をもつて引き続き堆積岩地域に対して組織的探査を行ない,ウラン鉱床の発見につとめるとともに,その地質鉱床学的研究および堆積型鉱床に対する探査技術の向上に関する研究を行なうこととする。

(1)放射能強度分布概査
 次の地域にカーボーン調査(面積約12,000平方キロメートル)および地質鉱床概査を実施して,放射能強度の分布状況を調査する。
(イ)カーボーン調査青森県,福島県,茨城県,滋賀県,福井県,大分県,熊本県(ロ)地質鉱床概査秋田県,山形県,新潟県,滋賀県,岐阜県,愛知県,大分県等

(2)放射能異常地調査および鉱床調査
 昭和39年度までの放射能強度分布概査の結果,放射能強度がとくに異常な次の地区に対し,放射能異常地調査を実施して新鉱床の発見につとめる。
 北海道今金地区,北海道太櫓地区,岩手県鉛山地区,岐阜県岩村地区,群馬県川場地区さらに,岐阜県土岐・瑞浪地区については,広範囲にわたりウラン鉱床の賦存が推定されるので,試すい探鉱を含む鉱床調査を実施して,地質の把握および鉱床の賦存状況の調査を行ない,今後の探鉱に資することとする。

(3)探査技術の向上に関する研究
 堆積型鉱床の賦存は基盤の地質構造と密接な関連を有することが判明しているので,土岐地区において地震探鉱および電気探鉱により基盤の地質構造を探知するために必要な技術を開発する。
 また,鉱床調査のための基礎的研究として,地球化学的,岩石学的,層位学的,堆積学的および微生物学的な諸研究を実施する。     -

2.原子燃料公社の行なう探鉱
 原子燃料公社は本年度予算約250百万円をもつて岡山県人形峠地区および鳥取県倉吉地区ならびにこれらの周辺において主として試すい探鉱および坑道探鉱により,既知鉱床の拡大と新鉱床の発見につとめる。その他,京都府奥丹後地区,岐阜県東濃地区等において積極的に探鉱を行なう。

(1)人形峠地区およびその周辺
 これまでの調査の結果から,堆積型ウラン鉱床における構造規制の状況が判明したので,本年度は十二川,長者および赤和瀬北部において試すい探鉱を実施し,鉱床の延長を追跡する。その他,佐治谷,黒岩および倉見について地表調査,電気探鉱,化学探鉱および試すい探鉱を実施し,新鉱床の発見と地質構造の解明につとめる。

(2)倉吉地区およびその周辺
 神ノ倉においては約1,500メートルの坑道探鉱を実施し,第3鉱体の鉱況の解明につとめる。また,鉛山,飯盛山,羽衣石および菅ケ谷において試すい探鉱により新鉱床の発見およびその追跡につとめる。その他千代川西部において電化探鉱を,鉢伏山において電気探鉱を実施する。

(3)奥丹後地区
39年度に引き続き大谷・来見谷地区を中心に試すい探鉱等を実施し,鉱床の分布範囲の確認と鉱況の解明につとめるとともに,同地区周辺部において地表調査,化学探鉱および電気探鉱を行ない,新鉱床の発見と地質構造の解明につとめる。

(4)東濃地区
 本地区のウラン鉱床はこれまでの調査から,賦存の範囲も広く,有望と認められるので,主として月吉地区において,地表調査,地震探鉱,電気探鉱,化学探鉱および試すい探鉱により積極的に探鉱を実施し,既知鉱床の拡大,新鉱床の発見および地質構造の解明につとめる。

(5)その他の地区
 これまでの調査により,鉱床の賦存が確認されている次の地区に,さらに地表調査,化学探鉱,Uスコープ調査および試すい探鉱を実施し,鉱況の把握につとめる。
 岩手県花巻,宮城県大内,新潟県上赤谷,鳥取県西部,島根県東部,鹿児島県垂水この他,地質調査所の行なう探査の結果,有望と認められる地区および既知鉱床の賦存地域と地質的条件を同じくする地区についても調査を実施し,新鉱床の発見につとめる。


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