第7章 国際協力
§4 2国間協力の動向

 わが国の原子力分野における国際協力は,前節に述べたIAEA,ENEA等の国際機関との協力のほか,米国,英国,カナダなどの各国とそれぞれ2国間協力がすすめられている。わが国の2国間協力の現況をみると,米国との場合は日米原子力協力協定(33年締結),英国との場合は日英原子力協力協定(33年締結),カナダとの場合は日加原子力協力協定(35年締結),フランスとの場合は日仏原子力協力書簡交換(40年),西ドイツとの場合は日独原子力協力書簡交換(35年)に,それぞれもとづいて行なわれている。このような協定または書簡交換にもとづく2国間協力は,主として原子力資材の移転と原子力情報の交換の両面においてすすめられている。原子力資材の移転については,日米,日英,日加の各原子力協力協定により,原子力開発の当初から,核燃料をはじめとして,研究用原子力炉,動力炉,その他の原子力資材を輸入してきた。これら原子力資材の輸入は,いずれも,わが国の原子力開発利用にきわめて重要な役割をはたしてきた。
 40年度においては,日米協定にもとづく細目協定が一応整備され,資材の輸入手続きが簡素化されたこと,JRR-2の使用済み燃料の再処理および返還がはじめて実施される見通しがついたことなどがあげられる。
 原子力の平和利用をすすめるにあたって,情報交換における国際協力の果たす役割は,きわめて重要である。40年度において情報交換活動としては,日米研究協力による日米間の活発な情報交換活動のほか,あらたに日仏および日英間に国際協力の話合いがすすみ,それぞれ40年7月および12月に書簡交換がおこなわれ,今後の成果が期待されることとなった。

1 原子力資材の移転

 日米協定では,米国から特殊核物質の供給を受けるたびに行政協定を締結することが必要とされていた。特殊核物質の賃貸借については,39年10月に締結された特殊核物質賃貸借包括協定(ブランケット協定)により,そのつどたんに発注書を出すのみで賃借できることとなった。購入についても,同様の簡便な方法を講ずるよう,米側と交渉を行ない,40年8月に研究用特殊核物質購入包括協定が成立した。この協定にもとづき,特殊核物質(研究用資材か核燃料かを問わず,原則としてウラン-235量にして10キログラムまでのもの)については,そのつど行政協定を結ばず簡単な方式により購入することが可能となった。しかし,ウラン-235量にして10キログラムに相当する量をこえる大量の特殊核物質の購入については,今後ともそのつど行政協定が必要となっている。
40年度のブランケット協定による賃借および購入協定にもとづく購入により入手された特殊核物質は,(第7-2表)および(付録IV-13)のとおりである。

 このほか,日米間で長年懸案となっていたJRR-2の使用済み燃料(米国から賃借中)の再処理および返還に関する取極めは,41年2月の米側担当官の来日,41年4月のワシントンにおける交渉などを通じて,ほぼ事実上の合意に達し,近く発効する見通しである。なお,この取極めは,その特殊な性格から,科学技術庁原子力局と米国原子力委員会との間の取極めとして結ばれる予定である。その点,従来の行政協定とは少し異なった性格をもつものである。
 日英協定関係では,原電の東海発電所の建設がすすめられる一方,同協定にもとづく査察,報告書の提出(40年11月以降毎月1回)などの保障措置が実施された。
 日加協定関係では,40年度中に天然ウラン218キログラム,イエローケーキ169キログラムを輸入した。また,同協定にもとづく,査察,報告書の提出(40年6月)などの保障措置が実施された。

2 情報交換

 日米間では,38年3月,核燃料研究に関する第1回ニューズレターの交換以来,核燃料研究について活発な情報交換活動が行なわれた。
40年度においては,技術者の交流が具体化し,日米両国間で技術者交流の実施契約が結ばれ,これにもとづき米国人技術者1名がわが国に派遣される一方,わが国からは,技術者が1名米国に派遣されるなど,日米研究協力が一歩前進することとなった。
 日仏間では,39年3月に日仏原子力協力に関するフランス原子力庁からの申出がある一方,40年5月には,原研とフランス原子力庁との間に放射線化学を対象とした協力協定が結ばれるなど,ようやく高まった両国間の協力の気運に対応して,両国政府間に,日独の例にならい科学および技術上の情報の交換,技術者の交流等を対象とした書簡交換を行なうこととなった。書簡交換を行なうにあたり,ユーラトムの了承を必要としていたフランス側から,40年7月,ユーラトムの了承を得た旨の連絡があり,40年7月に日仏両国間に原子力に関する書簡交換が行なわれた。これにより,今後両国間における原子力協力が一層促進され,具体的に進展することが期待される。
 日英間では,わが国は,33年6月,英国との間に原子力平和利用における協力のための協定を結び,動力炉の導入をはじめとし,同国と密接な協力関係を保持している。39年以来,原研と英国原子力公社(AEA)との間で,高速炉研究に関連した情報の交換を主な内容とする協力協定の締結交渉がすすめられた。
 日英協定は原研と英国原子力公社との情報交換について規定していないので,40年12月,まず日英両国政府において,原研とAEAとの間で締結される協定が日英協定の規定の範囲内のものであることを確認する書簡の交換を行ない,その後,12月末,原研とAEAとの協力協定が締結された。これにより,わが国にとりとくに期待されてる高速炉開発研究の基礎的分野において,国際協力の道がひらかれることとなった。


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