第5章 原子力施設の安全対策
§1 放射線審議会の活動

 放射線審議会は,各省庁が定める放射線障害の防止に関する技術的基準の斉一をはかることを目的として総理府に設置されている。放射線障害の防止に関する技術的基準を策定するに際してとるべき基本方針は,放射線関係従事者および一般国民の受ける線量を,障害を及ぼす線量以下とすることと定められており,同審議会は,この基本方針にもとづいて,関係行政機関の長からの諮問に応じ答申し,また,関係行政機関の長に対し,必要に応じて意見の具申を行なっている。
 40年度における関係行政機関からの諮問,およびそれに対する答申としては,次のものがある。
(1) 航空法および航空法施行規則にもとづく「航空機による爆発物等輸送基準を定める告示」のうち,放射性物質の輸送基準に関する諮問に対する答申。
(2) 電気事業法にもとづく,「原子力設備に関する技術基準を定める省令」のうち,放射線障害防止に関する技術的基準に関する諮問に対する答申。
(3) 「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令,施行規則および放射線を放出する同位元素の数量等を定める件の一部改正について」の諮問に対する答申。
(4)「職員の放射線障害防止に関する人事院規則の一部改正について」の諮問に対する答申。
 これらの詳細については付録IV-1に示すとおりである。
 次に,放射線審議会から関係行政機関に対する意見の具申としては,国際放射線防護委員会(ICRP)の1962年勧告に関する件と放射性廃棄物の海洋への処分に関する件がある。
 ICRPは,1962年にこれまでの勧告を一部修正し,1964年にこれを公表した。この勧告は,放射線障害防止の基本的な考え方を盛り込んだものであり,わが国においても採用すべき種々の点を含んでいる。それゆえ,審議会においては,その改正点について検討を行ない,わが国に採り入れるべき点について内閣総理大臣あて,意見の具申を行なった。その主な内容は次のとおりである。
(1) 妊娠可能年令の婦人の腹部の被曝は,3月間に1.3レム以下にすべきことおよび妊娠と診断された後は,残りの妊娠期間内に胎児の受ける線量を1レム以下とすること。
(2) ストロンチウム-90の水および空気中の最大許容濃度が従来の勧告の4倍の値となったこと。
(3) ウランの化学毒性を考慮して,水中の最大許容濃度の値を変更したこと。
(4) 眼の水晶体の許容線量を変更して,3月間に3レムであったものを4レムにしたこと。ただし,LET値の高い粒子放射線に対する被曝の場合は,さらに修正係数を乗ずること。
 また,放射性廃棄物の海洋への処分に関しても,審議会から関係各省庁の長へ,意見を具申した。これらについての詳細は,(付録IV-1)に示すとおりである。
 その他,40年度に審議会が検討した事項としては,災害対策特別部会において,内閣総理大臣からの「放射性物質の大量放出事故に対する応急対策の放射線レベルについて」の諮問の審議,測定部会において,よう素-131分析法の検討,基本部会において, 「個人の被曝線量の許容される値または限度の値を確保するための防護施設の基準を審議するにあたっての基本的考え方について」の検討をそれぞれ行なった。
 なお,放射線審議会は,第18回総会において,部会の組織を再編成し,常置部会としては,総括,基本,原子炉,アイソトープおよび測定の5部会とした。このほか議題に応じて,特別部会が設置されうることとなった。


目次へ          第5章 第2節へ