第5章 原子力施設の安全対策

 原子力開発利用の健全な発展をはかるためには,原子力関係施設の安全を確保しつつ,放射線障害の防止をはかり,施設の従事者をはじめ一般公衆に対する安全を確保することがきわめて重要である。
 わが国においては,このため「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法),「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(障害防止法)等の関係法令が整備され,種々の規制が行なわれ,安全確保に万全が期せられている。40年度には,これらの関係法令のうち,最近の原子力開発利用の進展に対応し,実情にそぐわなくなった点をあらため,あるいは新たに発生した事情に対処して,さらに,安全確保を強化するため,所要の改正が,原子炉等規制法および障害防止法に関し,それぞれの政令および総理府令の一部改正として行なわれた。
 また,「放射線障害防止の技術的基準に関する法律」にもとづき,総理府に設置された放射線審議会は,放射線障害防止に関する技術的基準の斉一をはかるため,関係行政機関の長からの諮問に答申し,必要に応じて意見の具申を行なうこととなっている。40年度においても活発な活動が行なわれた。
 原子炉の設置について,内閣総理大臣がその許可を行なう場合には,原子炉等規制法にもとづき,あらかじめ原子力委員会の意見を求めることとなっており,このうち原子炉の安全審査に関しては,原子力委員会の原子炉安全専門審査会において行なわれることとなっている。40年度には,日本原子力発電(株)敦賀発電所原子炉(原電敦賀炉)をはじめ,日本原子力研究所(原研)の高速炉臨界実験装置などについて慎重な審査を行なった。
 また,原研および原子燃料公社(公社)の再処理施設の安全性については,再処理施設安全審査専門部会において検討をすすめている。
 また,原子力委員会の原子力船安全基準専門部会は,原子力船運航に関する基本的な技術基準について検討をすすめている。
 原子力委員会の原子炉安全審査基準専門部会は,原子炉の安全解析に必要な気象に関する基準を審議し,「原子炉安全解析のための気象手引」をまとめ原子力委員会に報告した。原子力委員会は,原子炉安全専門審査会にこれを送付し,手引書を今後行なう安全審査の際の参考とするよう指示した。
 さらに,36年に制定された災害対策基本法にもとづく,放射性物質の大量放出に係る防災業務計画については,原子力局において,また,その応急対策の放射線レベルについては,放射線審議会において,それぞれ検討がすすめられている。
 このような対策に関連して,安全確保の基礎となる放射線障害の防止に関する調査研究が科学技術庁放射線医学総合研究所(放医研)をはじめ大学,国公立試験研究機関等において,基礎的な分野から放射線障害の臨床および放射線公害対策にいたるまでの広汎な分野にわたってすすめられているほか,放射性廃棄物の一元的な処理施設の整備や関連研究もすすめられている。
 一方,原子炉等規制法および障害防止法にもとづく原子炉主任技術者および放射線取扱主任者の国家試験が,40年度もそれぞれ実施された。
 原子力委員会は,原子力事業従業員災害補償専門部会からの「原子力従業員の原子力災害補償に必要な措置について」の答申を勘案して,原子力事業従業員の原子力災害補償について必要な措置を講ずるよう関係方面に実施方を指示した。
 また,原子力委員会は,原子力施設地帯整備専門部会からの「東海地区における原子力施設地帯の整備方針」についての報告を検討し,40年8月,東海地区地帯整備について決定を行ない,41年度から東海地区の道路等の整備に着手することとした。
 なお,茨城県東海村地区には,わが国の原子力開発関係施設が集中している事情にかんがみ,38年10月,茨城県水戸市に設置された科学技術庁水戸原子力事務所は,規制法令にもとづく一部の許認可業務,検査業務等を行なうとともに,東海地区周辺の放射線監視業務を定常的に実施している。


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