第2章 原子炉の開発利用
§7 核融合

 核融合反応により放出されるエネルギーを発電など平和目的に利用できるようにすることは,20世紀後半の科学技術の大きな課題の一つであり,すでに1950年ごろから各国において多種多様の高温プラズマ発生装置が建設され,その研究が推進されている。わが国においても2年ないし3年遅れて小規模ながら研究が開始された。しかしながら,核融合反応から利用可能な熱エネルギーを取り出すには,プラズマの加熱,封じこめ,安定化等に未解決な問題が多く,とくにプラズマが高真空磁場中で予想外な振舞いを示すことが多く,核融合の平和利用を実現することはかなり困難であり,基礎的研究を積み重ねる必要があることが明らかにされた。諸外国では基本問題にたちかえって鋭意研究がすすめられている。
 わが国でも,名古屋大学プラズマ研究所において完全電離プラズマ実験計画などが行なわれているのをはじめ,各大学において文部省予算によるプラズマの基礎的研究が行なわれている。また,原子力予算により電気試験所で逆転安定磁界型トーラス装置を使用した超高温プラズマの磁界中での長時間保持の研究が,原研でプラズマ・ガンによる超高温プラズマの形成の研究が,また理研で分光を中心としたプラズマの測定方法の研究が,それぞれすすめられている。これらの研究所で行なわれている現有装置の研究はここ2ないし3年のうちに終了するので,今後いかなる計画のもとに核融合の研究を遂行すべきかについては,日本学術会議における再検討の結論がまたれており,原子力委員会もわが国における研究のすすめ方について再検討を行なうことを考慮している。


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