第2章 原子炉の開発利用
§6 原子力船

3 原子力船懇談会

 原子力委員会は,「原子力第1船開発基本計画」実施上の問題点を検討するにあたり,学識経験者の意見を求めることとし,40年8月,原子力船懇談会を開催し,
(1) 基本設計等の再検討
(2) 現在の見積り価格に対する船価低減の可能性の検討
(3) 輸入舶用炉の検討
(4) 長期資金計画の検討
(5) その他
 等について,審議を求めた。
 原子力船懇談会では,9月から3回にわたり,原子力第1船の値上り理由および第1船搭載国産舶用炉における技術的問題点について審議が行なわれた。とくに,後者に関しては,さらに詳細に検討するため,技術小委員会を設けて検討が行なわれ,この結果,国産舶用炉については,重大な技術的欠陥があるとは認められないが,かなり重要な点で不確定な諸問題を含んでおり,研究開発および造船のすすめ方を,なお慎重に検討する必要があることが指摘された。
 科学技術庁は,上記原子力委員会および原子力船懇談会における検討に資するため,40年9月に調査班を欧米に派遣し,海外における軽水冷却型舶用炉開発の情況とその導入の可能性について調査を行なった。その結果,米国において,舶用炉を妥当な固定価格で供給する意志のあることが明らかにされた。
 また,事業団では,船価低減をはかるための既設計船の再検討を関係業者に依頼するとともに,不確定要素および技術的問題点の解明をすすめた。
 一方,上記海外調査班の報告結果により,米国のバブコック社(B&W社)とCNSG-J型舶用炉に関し価格見積りを含む予備設計契約について折衝を行ない,41年1月,正式契約を締結した。また,事業団では,輸入舶用炉搭載船の船体部について見積設計を行なうため,国内造船会社と個々に折衝した結果,石川島播磨重工業(株)をB&W社に推薦するとともに,CNSG-J型舶用炉搭載船の見積設計について同社と契約を締結した。
 原子力船懇談会では,このような経緯により,今後さらに国産舶用炉搭載船の船価低減の可能性および輸入舶用炉搭載船の船価ならびにこれらの技術的問題点について,比較検討する予定である。
 原子力委員会は,早急に原子力第1船開発問題について今後の方針を決定する予定である。


目次へ          第2章 第6節(4)へ