第2章 原子炉の開発利用
§5 材料試験炉,動力試験炉,研究炉および臨海実験装置

3 研究炉

 原研のJRR-1は,32年8月,臨界に達して以来,順調に運転がつづけられた。40年度も,39年度にひきつづき定常運転が行なわれ,原子炉研修所における教育訓練,簡易な照射実験などのために利用された。40年度における運転実績は,運転時間638時間,熱出力量1万4715キロワット時であった。
 原研のJRR-2は,39年度にひきつづいて照射試験,各種実験などに利用され,また,定格出力である1万キロワットに出力上昇が行なわれ,40年1月から8000ないし1万キロワットの熱出力で連続運転が行なわれてきた。
 しかし,3月以降,重水の洩れの急増が認められたので,40年7月,原子炉を停止し,重水洩れの原因を調査した結果,アルミシールの欠損部分から重水が洩れ出していることが判明した。修理工事は,原研内部で行なわれ,11月終了した。12月に施設検査および性能検査が行なわれ,1月に1万キロワットの性能検査合格証が交付された。その後も重水洩れについて周到な監視がつづけられている。40年度における運転実績は,運転時間1450時間,熱出力量1370万キロワット時であった。
 原研のJRR-3(国産1号炉)は,37年7月の臨界以降,低出力で運転されてきたが,40年2月,定格出力である1万キロワットの性能検査合格証が交付された。40年度においては,初頭から8000ないし1万キロワットで定常運転が行なわれ,ラジオアイソトープの試験生産が行なわれた。40年度における運転実績は,運転時間1650時間, 熱出力量1370万キロワット時であった。
 原研のJRR-4は,37年度から建設が進められていたが,40年1月,臨界に達した。臨界以後は,出力上昇試験,施設検査,性能検査などの各種試験検査が行なわれ,40年11月,1000キロワット性能検査合格証が交付された。以後定常運転にはいり,日本原子力船開発事業団(事業団)および船研と原研との共同研究による船用炉の遮蔽に関する研究に利用されている。
 また1000キロワット運転の実績等から連続最大出力に上昇させることが可能となったため,原子力委員会の安全審査をへて,2500キロワットに出力を変更することが認められ,41年4月,性能検査合格証が交付された。40年度における運転実績は,運転時間490時間,熱出力量53万キロワット時であった。
 京都大学研究炉は,学術研究および全国大学共同利用を目的として建設され,39年6月,臨海に達し,39年12月,施設検査および性能検査(1000キロワット)合格証が交付された。以後,定常運転にはいり,40年度においては,初頭から照射実験,炉物理実験,教育訓練などに利用された。また,燃料は,国産のものを使用するため,国内メーカーに発注された。40年度における運転実績は,運転時間1250時間,熱出力量103万キロワット時であった。なお,41年度には,原子炉の熱出力を3000キロワットに上昇させることが計画されている。
 このほか,立教大学研究炉,近畿大学研究炉,五島育英会研究炉,東京原子力産業研究炉および東京芝浦電気研究炉は,39年度にひきつづき,照射実験,炉物理実験,教育訓練などのために利用されている。
 なお,三菱電気研究炉は,建設計画が中止され,聴聞会をへて,41年6月に設置の許可の取消しが行なわれた。


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