第2章 原子炉の開発利用
§5 材料試験炉,動力試験炉,研究炉および臨海実験装置

1 材料試験炉

 原子力委員会は,38年8月,原研に材料試験炉(JMTR)を43年度完成を目途に建設せしめることを決定した。JMTRは,動力炉の国産化に資するため,原子炉材料と燃料の各種照射試験を行なうことを目的とするものであり,原研はその製作にあたって,国内技術水準の向上をはかるとともに,その維持保守などの便宜を考慮して,設計製作は国産技術によることとした。
 原研では,この線に沿ってJMTRの仕様書を作成し,39年7月,契約基本方針を決めた。すなわち,わが国の原子力5グループの代表会社を契約の相手方とし,総合性能試験を含め,設計から引渡しにいたるまでの責任を5社共同の責任とすることとした。また,設計製作には,できるだけ実証済みの技術を採用し,計装関係はトランジスタ化することとした。この方針のもとにJMTRの契約は,原研と代表会社5社との間で,40年3月締結された。
 JMTRの安全審査は原研から提出された「JMTRの設置に関する書類」にもとづいて行なわれ,40年7月JMTRを茨城県東茨城郡大洗町に設置することが認められた。
 JMTRは,熱出力最大5万キロワットの高濃縮ウラン軽水減速軽水冷却タンク型であり,燃料には改良ETR型燃料要素を用い,燃料装荷量はウラン-235で65キログラムである。この原子炉は,材料試験炉の特質上,中性子束が非常に高く(2〜5×1014/cm2 sec)燃料領域および,反射体領域には多数の照射実験設備が装着できるようになっている。また,燃料取替が頻繁であるため,圧力容器上蓋をつけたまま燃料取替が行なえるようになっている。
 建設工事は,40年8月から本格的に開始され,現在,原子炉建物の地上階までのコンクリート打設が終っている。また,圧力容器,1次冷却系配管などもすでに工場製作にとりかかっており,工事は順調に進捗している。


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