第2章 原子炉の開発利用
§4 動力炉の研究開発

2 新型転換炉および高速増殖炉

(1)新型転換炉
 新型転換炉に関する研究開発は,国産動炉開発の一環として,原研を中心に,産業界の参加,協力のもとにつづけられてきた。
 原研では,新型転換炉開発計画に関する海外調査を行なうとともに,重水減速炉の設計に関し,核設計について発表されている実験結果をウオッチ・タワー・コードでチェックして,同コードの精度を検討した。さらに,同コードにトリウム・チェインをつけ,重水減速炉に関して全核燃料につき評価できるように改良した。また,熱設計およびプラント設計に関しては,炭酸ガスの物性値状態方程式等をまとめるとともに,最新の実験式を用いた二酸化ウラン燃料体の熱発生率(fkdθ)について,計算コードを作成した。
 重水減速沸騰軽水冷却型炉の動特性解析については,軸方向空間変化を考慮しない場合の安全性に関する研究を完了した。また,その空間動特性解析については,民間企業との共同研究により汎用コードを作成し,安全事故解析,運転特性の解析等を行なった。

(2)高速増殖炉
 原研では, 大型炉心の炉物理的研究等を行なうことを目的として,39年度に,水平2分割格子型で円筒状炉心を3000リットルの容量まで拡張できる高速中性子臨界実験装置(FCA)の建設に着手した。40年度においては,9月に安全性についての審査をへて,内閣総理大臣から設置の許可が与えられ,10月に設計および工事方法について認可が与えられた。ひきつづき,12月には工場における組立調整が終了し,1月にベット・テーブルの精度試験が行なわれ,その組立が開始された。
 FCAの燃料については,20%濃縮ウラン135キログラムが40年度末に発注され,炉心希釈用および ブランケット用の天然ウランブロック6トンの仕様書が40年12月末に完成した。
 建家関係については,7月から炉室関係の床スチールライニング耐圧試験,1次容器床コンクリート打設が行なわれ,12月から2次容器壁,パルス中性子源室および居室のコンクリート打設ならびに鉄板のライニング立上り部の溶接工事が行なわれた。さらに,1月から気密扉の取付けと仕上げ工事が行なわれた。
 原研では,43年度に建設を開始する予定の実験炉の概念設計のために,燃料取替方式,ニッケルによる反射体制御方式などの検討,燃料わん曲に関する計算コードの作成,二酸化プルトニウム,二酸化ウランの均質装荷およびゾーン装荷に関する核計算,高速炉用燃料の臨界量の解析,予備設計にもとづくドップラー係数およびナトリウム係数の反応度効果等の総合的動特性の評価を行なうとともに,公社との共同研究による試作燃料集合体の製作を行なった。
 原研では,また,43年から概念設計を開始する予定の電気出力100万キロワットの大型炉について民間企業5社から客員研究員を招き,11月からその予備設計を行なった。この予備設計では,内部増殖比を1以上にすることを目標として,ボイド領域の拡散近似の検討および大型炉心の実効共鳴断面積の計算コード“ERECS″の作成を行なって,炉心の構造およびプラントの諸元を大まかに決め,燃料交換法等の決定を行なった。
 高速増殖炉用燃料およびプルトニウム-ウラン混合燃料の研究について,原研では,プルトニウム特別研究室のグロープ・ボックスの整備を行なうとともに,X線回析装置などを用いて二酸化ウラン粉体の焼結における粒生長などの研究を行なった。
 一方,公社では,当面,プルトニウムの熱中性子炉への利用を考えて,二酸化プルトニウム-二酸化ウランの混合酸化物燃料の開発を目標として,まず,二酸化ウラン粉末の製造試験および振動充てん法の研究を行なった。
 公社では,米国ニュークリア・ユーティリティ・サービス(NUS)社の協力を得て,減損ウランにプルトニウムを添加した燃料の設計をすすめた。また,原研では軽水臨界実験装置(TCA)で不均一密度の燃料体中の中性子束分布を知るための実験を行ない,THERMOSコードによる計算とよく一致した結果を得た。
 ナトリウム技術の開発については,原研では,ナトリウム循環予備試験ループを完成し120時間の連続運転によりループの総合的性能試験を終了したので,今後,このループにおいて腐食試験および酸素除去試験を行なう予定である。また民間企業と協力して実施していたナトリウム精製試験ループ実験を6月末に完了し,データの解析を行なった。さらに,高流速ナトリウム腐食試験ループの詳細設計を終え,製作にはいった。
 炉物理の研究については,原研では,天然ウラン系での高速中性子パルス実験を行ない。天然ウラン体系での高速中性子の拡散実験を行なうとともに,既成コードの改良を行なった。


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