第1章 総論
§8 国際協力

 わが国は,原子力平和利用に関して,常に世界各国との密接な協力を行なうよう努力をはらってきた。40年度には,国際原子力機関(IAEA)の第9回総会が東京で開催された。IAEAの総会がウィーンを離れて開催されたことは,その創設以来はじめてのことであり,この機会に,各国代表がわが国の原子力開発に深い認識をもつたこと,および,各国代表とわが国原子力関係者との会談を通じて広く国際協力の道がひらけたことは,きわめて大きい意義があった。また,同総会で,原子力資材の軍事目的の転用防止に関する新保障措置規則が付議され,総会後の理事会で正式に決定された。この新規則は,従来,研究用原子炉のみに限られていた保障措置の適用を,熱出力10万キロワット以上の商業用発電炉等の大型原子炉にも拡大し,その実施にあたっては,主として核物質に着目する方式をとっている。この新保障措置規則の採択は,原子力平和利用の確保をかかるIAEA憲章におけるその任務をさらに具体化したものであり,また,わが国もかねてからその実現を希望していたものであって,同総会の成果の一つとして注目される。
 さらに,40年度においては,とくに研究協力の積極的な推進がはかられた。すなわち,ENEAの共同事業への参加をはじめとして,ユーラトムとの研究協力についての交渉,英国との高速増殖炉に関する研究協力の実施およびフランスとの放射線化学の分野における研究協力の実施がすすめられた。
 このほか,日米原子力協力協定の保障措置のIAEAへの移管にひきつづき,日英,日加両保障措置の移管も,関係諸国とIAEAとの間で,日英については40年5月,日加については8月,それぞれ協定の内容について最終的な合意に達し,近く実現される予定である。


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