第1章 総論
§7 安全対策

 原子力開発利用の推進にあたっては,原子力関係施設の従事者および一般国民の安全確保をはかることはきわめて重要なことである。このため,原子力委員会を中心として安全確保に万全を期する努力がひきつづきはらわれた。
 まず,法令の整備においては「核原料物質・核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法)について,原子力船の入港に関し所要の規制を加えた改正が40年5月に行なわれたが,これにともなう施行令などの改正のほか,原子炉事故などの報告について実情に即した改正がひきつづき40年度中に行なわれた。また,「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(障害防止法)に関しても,国際放射線防護委員会(ICRP)勧告をとりいれた改正など,現状に即するよう施行令,施行規則の改正が行なわれ,41年5月からそれぞれ施行された。
 放射線審議会においては,障害防止法施行令の改正に係わる技術的基準に関し審議され,その答申が行なわれるとともに,ICRP勧告の一部修正にともなう意見などについて関係行政機関に対し意見具申が行なわれた。
 原子炉安全専門審査会は,原電敦賀発電所原子炉をはじめ,原研の高速臨界実験装置などについて審査を行なった。
 原子力委員会は,原子炉安全基準専門部会の作成した「原子炉安全解析のための気象手引」を検討し,原子炉安全専門審査会に対して,これを今後行なう安全審査の際の指針とするよう指示した。
 また,再処理施設安全専門部会は,原研の再処理研究施設および公社の再処理施設の安全性について検討を加えている。
 原子力船安全基準専門部会は,原子力船運航に関する基本的な技術基準について検討している。
 さらに,原子力委員会は,40年5月,原子力事業従業員災害補償専門部会が答申した「原子力従業員の原子力災害補償に必要な措置について」を検討したうえ,40年8月,この答申にそって原子力従業員の原子力災害補償の措置について実施をはかるよう関係方面に指示した。
 東海地区原子力地帯整備に関し,原子力委員会は,39年12月,原子力施設地帯整備専門部会が答申した「東海地区における原子力施設地帯の整備方針」について検討をすすめたが,さらに40年6月,この答申にそって,茨城県が,科学技術庁の委託により作成した「東海地区原子力施設地帯の整備計画」についての報告を受けた。原子力委員会は,40年8月,上記答申および報告書を勘案し,東海地区の特殊性にかんがみ,この地区に限り地帯整備を行なうこととし,41年度に道路等の整備が行なわれることとなった。
 核実験にともなう放射性降下物に関する調査は,39年度にひきつづき実施された。
 とくに,40年5月,41年5月に,中共が行なった大気圏内核実験に対処して,内閣に設置されている放射能対策本部は,防衛庁,気象庁などにおける放射能観測を強化し,浮遊塵,雨水等の放射能調査を実施したが,とくに対策を講じる必要は認められなかった。
 また,米国原子力潜水艦の佐世保港寄港に関し,定期調査のほか,寄港前後の環境放射能調査が実施された。41年6月には,横須賀港にも入港し,同様の調査が実施されたが,いずれの場合も放射能水準に変化が認められなかった。


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