第1章 総論
§5 原子力船の開発

 わが国における原子力船の開発に関しては,38年に,原子力委員会が策定した原子力第1船開発基本計画の線にそって,事業団において,設計がすすめられ,39年度末,造船業者との間に建造契約の折衝が行なわれたが,契約成立にいたらなかった。その後,事業団と造船業者および原子炉製造業者の間で,さらに契約交渉がすすめられてきたが,40年7月に事業団から船価見積額約60億円が提示された。原子力委員会は,これが原子力船専門部会等の議をへて予算化された第1船建造費36億円とはなはだしくかけ離れており,かつ,その内容には少なからず不確定な要素が含まれているので,この際原子力第1船の建造着手を若干延期し,上記開発基本計画の実施上の問題について検討を加えることとした。このため,8月から学識経験者を中心として,原子力船懇談会を開催することとした。一方,この懇談会の・審議に資するため,科学技術庁は海外舶用炉開発状況調査班を派遣した。
 懇談会では,基本設計等の再検討,上記の見積価格に対する船価低減の可能性の検討を行ない,さらに舶用炉輸入の検討も行なうこととしている。このため,事業団においても,国産舶用炉搭載船の設計の再検討が行なわれ,また,不確定要素の解明に努力がはらわれるとともに,西ドイツのオットーハーン号搭載の舶用炉について輸出の経験をもつ米国バブコック・アンド・ウイルコックス社に対し,第1船搭載舶用炉の予備設計を依頼した。
 原子力委員会は,懇談会の検討結果などを勘案して,早急に今後の開発方針を決定する予定である。


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