§6 欧州原子力機関への準加盟

 欧州経済協力機構(OEEC)は,32年12月,原子力分野における加盟国相互の協力関係を密接にするため,欧州原子力機関(ENEA)を設立した。
 その後,36年にいたり,OEECは経済協力開発機構(OECD)に改組され,わが国は,39年4月正式にそのメンバーとなった。これは,わが国の著しい経済の成長が西欧先進国の間で高く評価され,世界経済の発展と後進国,援助という目標にむかってすすんでいくわが国の地位が認められたためである。これにともない,その下部機構であるENEAの加盟についても検討が行なわれた結果,米国,カナダの両国と同様に準加盟国という資格によってこれに参加することとなり,40年2月に参加を申し入れていたが,同月23日のOECD理事会において正式に承認された。これにより,ENEA参加国は21箇国となった。
 ENEAは,すでに共同事業,科学協力および情報交換,安全規準の作成等広分野にわたる活動を行なっている。
 共同事業は,加盟国または準加盟国がそれぞれのテーマに応じ個別の協定のもとに,共同して開発研究を実施するもので,ユーロケミック社の設立と運転(注1),ハルデン計画(注2),ドラゴン計画(注3),および食品照射共同研究(注4)の4つがある。
 科学協力および情報交換は,ENEA中性子データ編集センター,ENEA計算機プログラミング・ライブラリィがいずれも,39年6月設立され,それぞれ情報交換センターとして大きな期待がよせられている。そのほか,各種専門委員会,ワーキンググループが10余り設置されており,常時専門家による討論,情報交換が行なわれている。
 ENEAは,これまでに放射線防護,放射性物質の輸送,廃棄物処理,第三者損害賠償等について規準を作成し,これら規準の採用を各国に勧告している。
 わが国は,準加盟国の実現を機に,これらの諸活動への参加を検討中である。前述の共同事業については,かなり以前から実施されており,食品照射研究をのぞき,わが国が今から参加する意義は少ない。また,安全規準等は地理的条件等から,わが国にとって必らずしも適合しない。よって,わが国とENEAとの協力は,当面,情報交換等による実質的な協力が中心となるものと思われる。


脚注 (1)ユーロケミック社;設立:34年。参加国:ドイツ,オーストリア,ベルギー,デンマーク,フランス,イタリア,ノルウエー,オランダ,ポルトガル,スエーデン,スイス,トルコおよびスペインの13箇国。
目的:使用済燃料に関する調査研究,再処理事業,核分裂生成物の利用および技術者養成を任務とする
(2)ハルデン計画:発足:33年。参加国:ノルウエー,オーストリア,デンマーク,スイス,フインランド,ユーラトム。協カ国:米国,カナダ,
目的:30年以来ノルウエー原子力研究所がハルデンに建設中であった沸騰重水型炉(熱出力2万キロワット)の開発研究を行なう。
(3)ドラゴン計画;発足:34年,参加国:英国,オーストリア,デンマーク・ノルウエー,スエーデン,スイス,ユーラトム。
目的:高温ガス冷却型原子炉の実用化を目的して,経済的な大型ガス冷却型炉の設計データをえることを目的としている。原子炉(熱出力2万キロワット)はすでに39年に完成。
(4)食品照射共同研究;発足:40年。オーストリア。IAEAとの共同研究プロジェクト,放射線による食品の殺菌保存法の開発を目的とする。

 なお,ENEAへの準加盟実現にともない,同機関事務局長が原子力委員会の招待により,40年2月来日し,わが国とENEAとの協力関係について各方面の関係者と懇談した。


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