§4 2国間協定

 現在わが国が締結している原子力平和利用のための2国間協定には,原子炉,濃縮ウラン等の受入れを予定した日米協力協定(33年12月発効10年間有効),動力用原子炉,天然ウラン燃料の受入れ予定した日英協定(33年に発効,10年間有効)およびウラン精鉱等の受入れを予定した日加協力協定(35年6月発効,10年間有効)がある。
 上記協定の39年度中の実施概況は,つぎのとおりである。
 日米協力協定については,同協定第7条にもとづく特殊核物質の賃貸借が活発に行なわれた。36年5月に締結された特殊核物質賃貸借協定(ブランケット協定ともいい,これは従来の1件ごとに行政協定を結ぶ方式を廃止し,この協定に定められた条件のもとに日米間の特殊核物質の賃貸借のすべてを包括的に取り扱うための協定である。)は,38年6月30日に期限満了となり,新ブランケット協定の締結交渉が開始された。しかし,米国側が新協定案に盛りこんできた免責条項と関連し,米国から日本への特殊核物質の引渡し地点をどこにするか等に関する意見調整のため,交渉が長びいた。そのため,旧ブランケット協定を暫定的に延長する措置が講じられていたが,39年10月末にいたって,ようやく新ブランケット協定が署名され,発効した。新協定は従来の賃貸借協定(第1次,第2次賃貸借協定を除く。)をすべて包含するとともに,旧ブランケット協定にくらべると,基本的には相違はないが,免責条項,無保証条項,査察条項等があらたに挿入された点で異なっている。なお,有効期限は,42年6月30日までである。ブランケット協定等による特殊核物質の米国からの輸入は,(第7-4表)に示すとおりである。新協定の成立により,今後とも簡便な手続で特殊核物質を入手することができることとなった意義は大きい。

 このほか,日米協力協定上,両国間で懸案となっていたものには,研究用特殊核物質包括購入協定とJRR-2使用済燃料再処理協定とがある。
 購入協定は,従来,研究用特殊核物質の購入については,1件ごとに行政協定を結んでいたが,この手続を簡略化するため,両国政府間で包括的に条件を協定し,これにもとづいて必要あるごとに購入しえるようにしょうとするものである。この協定についても,日米協力協定の授権範囲と購入協定案中の免責条項との関係について日米両国間で調整に時間を要したが,ようやく39年度末にいたりほぼ合意に達し,40年度早々に最終的な妥結に達する見込みである。
 また,再処理協定は,JRR-2使用済燃料(米国政府から賃借したもので,標準形状にして返還する旨,賃貸借協定で約束している。)を日米協力協定第7条G項により米国原子力委員会の施設において再処理するための条件を定めようとするものである。この交渉は,再処理することがわが国にとって最初の経験であること,米国側作成の協定案文が詳細かつ複雑で検討に時間を要すること,日米協力協定の授権範囲との関係において調整を要すると認められる事項を含んでいることなどの理由から,交渉は,意外に手間とっている。しかし,JRR-2の使用済燃料の取扱い上なるべく早い時期に妥結することが望まれている。
 日英協力協定については,同協定にもとづいて締結された英国原子力公社と日本原子力発電株式会社との間の契約により,39年度前半に同発電会社に英国から214トン(ウラン量)の天然ウランが輸入された。
 日加協力協定については,これにもとづいて,39年度において天然ウラン217キログラム(ウラン量)および天然ウラン精鉱419キログラム(ウラン量)が輸入された。


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