§2 国際原子力機関の保障措置

 わが国は,現在3つの原子力関係の協力協定(日米,日英,日加)にもとづいて原子炉,核燃料物質および核原料物質等を入手している。これらの協定は,上記の資材が軍事目的に転用されることを防止するため,これら資材をすべて供給国の保障措置のもとに置いている。すなわち,これらの協定は,いずれも保障措置の具体的手続として,設備の設計審査,運転記録の保持および提出,査察等を行なうことを定めるとともになるべくすみやかにこれらの保障措置を国際的中立機関であるIAEAに移管すべき趣旨を定めている。
 一方,IAEAは,その憲章により,機関みずから原子力資材の供給者となった場合,2国間または多数国間条約の締約国から要求された場合等には,IAEAが保障措置を実施することがその任務の1つとされている。この精神にしたがって,IAEAは,36年1月の理事会において保障措置制度(ただし,熱出力10万キロワット未満の研究用原子炉を主たる対象とする。)を制定し,これを実施する体制を整えた。
 わが国は,2国間協定に示されている方針にしたがい,2国間協定上の保障措置をそれぞれIAEAへ移管することとし,まず日米協力協定にもとづく保障措置の移管について,IAEA,日本,米国間で交渉を行なった結果,その移管協定が38年9月に署名され,11月に発効した。
 その後,IAEAは,各国における原子炉の大型化にともない,39年2月に現行保障措置の適用を熱出力10万キロワット以上の原子炉に拡大するとともに,この保障措置制度の再検討を行なうこととなった。
 このような情勢に対応して,39年度にIAEAは,現行保障措置制度にもとづく保障措置を実施するとともに,新しい保障措置制度の確立のために努力した。これに関連し,わが国としては,日英,日加両協力協定の保障措置をIAEAに移管するための交渉をひきつづき行なった。


目次へ          第7章 第2節(1)へ