§4 研究炉および臨界実験装置

1.研究炉

 原研のJRR-1は,32年8月27日臨界に達して以来,順調に運転がつづけられてきた。39年度は,前年度にひきつづき定常運転が行なわれ,原子炉研修所における教育訓練,簡易な照射実験等のために利用された。39年度における運転実績は,運転時間604時間,熱出力量1万5668キロワット時であった。
 原研のJRR-2は,38年度にひきつづき定常運転が行なわれ,照射試験,各種実験等に利用された。39年12月に熱出力4万キロワット性能検査が行なわれ。40年1月12日に合格証が交付された。40年1月から熱出力8000キロワットで2サイクル,1万キロワットで3サイクルの運転が行なわれた。また,EFTL(水ループ),HWL-1(水ループ),LNTL(低温ループ)およびTLG-1-50(高温ガスループ)の4インパイルループの設置が承認され,燃料試験片の照射が行なえるようになった。39年度における運転実績は,アルゴンを放出した場合の安全解析等に手間どって,予定どおり運転ができなかったので,目標を若干下まわって,運転時間2265時間,熱出力量1280万キロワット時であった。
 原研のJRR-3は,39年3月に1万キロワットの短時間試験運転に成功し,40年1月から長時間連続運転にはいって。JRR-3は,国産の研究炉を開発するために,29年度から検討されてきた計画にもとづいて,原研が,その発足当初から中心となって研究開発をすすめてきたものである。同炉は,33年末から民間企業によって建設され,37年9月,臨界に達し,その後,特性測定等のために低出力で運転されてきた。同炉は,1次装荷燃料および重水を除いて設計から建設まで国内技術の総力を結集して完成したものである。この炉の建設にあたっては,わが国の技術陣にとって,新しくかつ困難な問題を解決せねばならなかったので,その完成が当初の予定よりも大幅に遅れたとはいえ,わが国の技術水準を向上させるために大きく貢献した。39年度においては,4月に破損燃料検出装置の性能試験,1万キロワットでの運転練習等を行ない,その後,オーバーホールを行なって,7月から高出力で制御棒較正,炉内熱中性子束分布の測定,動特性の測定等を行なって,9月末にこれらの特性測定を終了した。10月から12月までは,水ガス系統の機器点検,緊急冷却系の点検,作動試験等を行なった。JRR-3の定格出力である熱出力1万キロワットにおける炉の性能を検査するため,40年1月,24時間連続運転が行なわれ,2月,1万キロワットの性能検査合格証が交付された。40年度以降の定常運転に備えて,性能検査合格後,2月から4月にかけて,4回にわたって直勤務体制による長時間連続運転が実施された。この間に,ラジオアイソトープの試験生産が行なわれた。また,40年3月,極低温,ループの設置が承認された。
 原研のJRR-4は,しゃへい実験を目的として37年から建設がすすめられ,40年1月28日,臨界に達した。JRR-4の現地据付工事は,39年6月までにほとんど完了し,その後,各系統の作動試験および総合作動試験が行なわれた。これらの試験は,39年11月に完了し,JRR-4は,建設業者から原研に引渡された。それにひきつづき習熟運転等が行なわれたが,ゲート置場に破損事故が発生したため,臨界試験は,約1箇月遅延した。臨界後は特性測定が行なわれており,40年度の中頃から定常運転にはいることになる。なお,40年度から,同炉を利用して日本原子船開発事業団(原船)および運輸省船舶技術研究所と原研との共同研究による舶川炉のしゃへいに関する研究が行なわれることになる。

 京都大学原子炉実験所の研究炉は,36年末から建設がすすめられ,39年6月25日,臨界に達した。臨界後は特性測定等が行なわれ,39年12月,施設検査および性能検査合格証が交付された。同炉は,40年はじめから照射実験,物理実験等に利用されている。同炉は,研究と教育訓練を目的として全国の大学の共同利用に供するためのものであり,しかも関西地区に設置されたことにおいてとくに意義の深いものである。同炉の敷地については,31年に関西研究用原子炉設置準備委員会が発足してから,数地点について検討がすすめられ,36年にいたり現敷地大阪府泉南郡熊取町に決定された。
 このほか,立教大学研究炉,近畿大学研究炉,五島育英会研究炉,東京原子力産業会研究炉および東京芝浦電気研究炉は,38年度にひきつづき,照射実験,物理実験,教育,訓練等のために利用されている。
 なお,37年8月に設置許可になった三菱電機研究炉については,その後建設計画がとりやめになった。


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