§1 動力炉開発

2.高速増殖炉

 原子力委員会は,わが国における高速増殖炉の研究開発の基本方針あるいは具体的計画を検討するに先だつこその考え方をまとめるため,39年2月以来,高速増殖炉懇談会を開催して学識経験者の意見を求めてきた。高速増殖炉懇談会は,同年6月までに7回開催され,内外における高速増殖炉の開発の動向とその問題点について懇談がなされた。懇談会においては,当面,わが国は高速増殖炉の設計研究および臨界実験装置等による基礎研究を行なうべきであり,今ただちに実験炉の建設を目標として研究をすすめるべきではないとの意見が有力であった。
 原子力委員会は,わが国の高速増殖炉の開発を原子力開発全般の立場から論議する必要があることを考慮して,高速増殖炉懇談会の基本的審議事項を前記の動力炉開発懇談会の発足を機に,その審議事項のなかに包含せしめることとした。
 わが国の高速増殖炉に関する基礎研究については,従来から主として原研において行なわれてきた。
 39年度から,原研は,高速中性子臨界実験装置の建設に着手しており,その臨界実験を行なうための安全性評価の作業をすでに完了した。
 高速増殖実験炉が,将来わが国に設置されることを想定し,かつ,実験炉の概念をうることを目的とした設計研究の一環として,エンリコ・フエルミ炉を中心に海外技術の調査とその検討を行なうとともに,この型の実験炉についての設計を行なった。
 炉物理の研究として,炉心に二酸化プルトニウムを用いドライバー領域に二酸化ウランを用いたゾーン型について,核計算による最適炉心の設計を行なった。また,ドップラー効果の反応度への影響について,その計算法と測定法が調査された。
 冷却材のナトリウム技術は,炉の安全性の点からも高速増殖炉の開発にとって必須のものである。39年度に,原研は,ナトリウム腐蝕試験ループをナトリウム精製試験ループに改造し,また,ナトリウム中の酸素および炭素の微量分析装置を製作した。ナトリウム循環予備試験ループについては,39年9月発注され,40年6月に原研に設置完成される予定で製作がすすめられている。また,熱除去能力が1000キロワットの大型ナトリウム・ループの設計研究も継続して行なわれている。


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