第8章 原子力関係技術者の養成および原子力知識普及活動
§2 国内における養成訓練

1.日本原子力研究所における養成訓練

 原研は,原子炉研修所およびラジオアイソトープ研修所において,各種の原子力関係の技術者の養成訓練を行なっている.

(1)原子炉研修所
 原子炉研修所においては,原子炉関係技術者の養成訓練のため,33年9月にJRR-1短期訓練課程,34年4月に高級課程,35年3月に一般課程が開設された.一般課程は定員32名,期間6箇月であり,大学の理工科系学科を卒業後2年以上を経た者を対象に,原子炉関係の一般知識を習得させることを目的としている.38年度は,4月から第7回課程が,10月から第8回課程が行なわれた.参加者は第7回課程31名,第8回課程32名で,開設以来,計8回の課程で合計197名が受講した.高級課程は,定員15名,期間1年であり,原子力関係の教職員,研究者および将来原子力産業従事者となる者を対象に,原子炉に関する高度の知識および技術を習得させることを目的としている.その対象は,大学の理工科系学科を卒業後5年以上の研究経験を持つ技術者および研究者である.期間1年のうち9箇月間は,受講者を受入研究室へ配属し,特定テーマの研究を行なわせ,残りの3箇月間は一般課程を聴講させ,JRR-1の運転実習に参加させている.38年においては,4月から第7回課程が始まり,受講者は2名あったが,10月から始まることになっていた第8回課程には応募者が皆無であった.34年4月に第1回の課程が始まってから,39年3月まで7回の課程を終了し,受講者の合計は35名に達する.JRR-1短期訓練課程は,33年に期間9日の課程として開設されたが,36年9月から期間は2週間にあらためられた.対象もこの時から大学院修士課程学生に限られることとなった.定員は15名である.38年度には10月から第18回課程および11月から第19回課程がそれぞれ実施され,受講者はそれぞれ10名であった.この結果,33年度に本課程が開設されてから合計237名が受講したこととなる.
 なおこれらの諸課程の受講者の内訳を(第8-2表)に掲げる.

(2)ラジオアイソトープ研修所
 ラジオアイソトープ研修所においては,ラジオアイソトープ取扱技術者の養成訓練のために,32年度に基礎課程,35年度に高級課程が開設された.38年度は,さらに特殊テーマの実験を主たる内容とした研修課程として新たに専門課程が設けられた.基礎課程は,定員32名,期間4週間である.受講者の資格については,とくに制限はないが,大学教養課程の物理,化学を理解する程度の学力を必要とし,受講者は,書類選考によって決定されている.38年度は,合計8回の課程が行なわれた.内訳は国際原子力機関の留学生コース1回,原研新入所員の研修コース1回,一般コース6回であり,原研以外の受講者は計212名であった.これにより33年度に第1回課程が開設されてから,原研所員研修コースを除き,計44回行なわれ,外国人122名を含む1,376名が受講したこととなる.外国人の大部分は,東南アジアからの留学生である.高級課程は,工学系,化学系および生物系各5名,計15名の定員であり,受講資格は基礎課程修了またはそれと同等以上の知識経験を有する者となっている.38年度は第8回課程および第9回課程が行なわれ,受講者はそれぞれ12名であった.第1回から第9回までの受講者の合計は,外国人4名を含め83名である.専門課程は,38年度に新たに設けられたものである.その受講資格については,とくに制限はないが,ある程度の物理および化学の知識が必要とされる.木課程は密封線源コース,オートラジオグラフコースおよび軟ベータアイソトープコースの3コースに分れており,定員はそれぞれ15名である.38年度は申込者数が多かったため,第1回の密封線源コースが26名,第2回の軟ベータアイソトープコースが18名,第3回のオートラジオグラフコースが20名の受講生を受け入れた.このようにラジオアイソトープ研修所においては研修内容の充実をはかるとともに,積極的に外国人留学生を受け入れるよう努力している.
 なお,これらの諸課程の受講者の内訳を(第8-3表)に掲げる.

2.放射線医学総合研究所における養成訓練

 放射線医学総合研究所は,35年1月に放射線防護課程を,37年2月に放射線利用医学短期課程を開設し,関係技術者の養成訓練を行なっている.放射線防護課程は定員30名,期間8週間である.受講資格は旧専門学校または短期大学卒業以上の学歴を有することであり,放射線防護に従事している者または従事しようとしている者を対象としている.38年度には第8回課程が5月から,第9回課程が10月からそれぞれ行なわれた.これにより本課程開設以来,合計9回の課程で276名が受講したこととなる.放射線利用医学短期課程は医師を対象としたもので,定員16名,期間4週間である.第4回以降は研修効果をより一層あげるためコースの約4分の1をラジオアイソトープ診断および放射線治療にわけ,それぞれの問題をとりあげて行なうこととなった.38年度は,第4回課程が9月から,第5回課程が39年2月から行なわれ,それぞれ16名が受講した.37年2月第1回課程が実施されてから合計5回の課程が行なわれ,受講者の合計は80名に達する.
 これらの課程の受講者の内訳は第8-4表に掲げる.
 なお,以上の課程のほかに39年度からは放射性薬剤課程が新設され,放射性医薬品の製造,供給,管理等の業務に従事している薬剤師等の技術者に対し,放射線の防護の見地から基礎理論および技術を与えることを目的として実施されることになっている.募集人員は20名,期間は4週間の予定である.

3.大学における養成訓練

 大学における原子力関係の技術者および研究者の養成訓練については,31年以来,年々講座および学科の新増設ならびに大学院課程の設置が行なわれ,各大学は原子力関係の技術者および研究者の養成に中心的な役割を果たしている.39年度には東京教育大学理学部に放射線物理学の講座が新設され,長崎大学医学部に原爆後障害医療研究施設が設けられることがきまった.
 原子力関係の学科,講座およぴ大学院の状況は(付録V-12表)に示すとおりである.
 なお,大学の原子力関係の設備について充実がはかられ,39年度に次のような設備が設置されることがきまった.すなわち,東京大学および京都大学に原子動力実験装置が新設される.東北大学にはコバルト60照射装置が設けられる.また,東京大学のダイナミトロンおよび東北大学の直線加速装置は前年度にひきつづき整備が進められる.その他ヒューマンカウンターが東京大学に,エリヤモニターが北海道大学,東京大学および名古屋大学に備えつけられる.大学付置研究所としては,東京工業大学には原子炉工学研究所が新設されることになった.東京大学原子核研究所および京都大学原子炉実験所の整備も進められている.このように大学における原子力体制は次第に整えられてきている.

4.その他の機関における養成訓練

 茨城総合職業訓練所は,37年4月定員30名,訓練期間2年の原子力工業科を設置した.ここにはラジオアイソトープ利用,原子燃料製錬および原子炉運転の3コースがある.入所資格は,高等学校卒業以上の学力を有する者であり,その修了者は,短期大学卒業の認定をうけることができる.原子力工業科は,39年3月始めての卒業者22名を出し,全員民間企業の原子力関係部門に就職した.発足当時は応募者が多かったがその後次第に減少する傾向にある.民間企業においても,研究用原子炉,その他の設備を使用して,その企業内の技術者の訓練を着実に行なってきている.


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