第7章 国際協力
§5 情報および科学技術者の交流

 原子力の平和利用を進めるに当たって,情報および科学技術者の国際的交流の果たす役割は,極めて重要である.
 原子力平和利用の分野にあって,国際的な情報の交換および科学技術者の交流の中心となっているのは,国際原子力機関である.同機関は,38年度に9つのシンポジウム・科学会議を開催した.わが国からは,これらのうち,8つのシンポジウムに合計22名が参加した.  ((付録V-7表)参照)
 また,同機関は,アジア諸国の研究炉の有効利用を図るため,研究炉の利用に関するアジア地域研究グループ会議を37年12月のパンコックにひきつづき,38年12月マニラで開催した.わが国は,この分野における国際協力に寄与するため,バンコックの会議におけると同様マニラの会議にも積極的に参加し,専門家4名を派遣して関係問題を討議した.また,わが国においても,海外から原子力関係者を迎え,種々の国際会議が開催された.38年10月には,東京において,第2回日加原子力技術会議が開催された.同会議は,日加協定の規定にもとづき,原子力の分野において両国が共通の関心を持つ技術的問題について討議するため,毎年1回,両国で交互に開催されることになっており,第1回会議は,37年11月オタワで開かれている.38年5月には,東京において,日本原子力産業会議および日本放射性同位元素協会の主催により第5回日本アイソトープ会議が開催され,国際原子力機関および16箇国から専門家および関係者約80名が参加し,また,外国から論文20編が発表された.
 これらの会議の出席者のほか,38年度にわが国を訪問した原子力関係者のうち主なものは,(付録V-8表)に示すとおりである.
 日本と西ドイツ間の技術者交流計画による西ドイツからの派遣技術者は,39年1月来日した.また,東南アジアの原子力開発技術に対して援助を行なうため,国際原子力機関を通じてわが国の専門家2名が派遣された.これら専門家のうち1名は,東南アジアにおける放射線およびラジオアイソトープの農業利用に関する同機関顧問として,また,他の1名はタイ国の研究用原子炉の有効利用について指導を行なう同機関の専門家として派遣されたものである。
 38年度には,わが国から欧米諸国の日本原子力研究所調査するため,(付録V-9表)に示すとおりの調査団が派遣された.
 一方海外諸国との原子力関係の情報および文献の交換は,原子力委員会,国立試験研究機関,日本原子力研究所等において行なわれている.とくに,原研は,わが国の論文を“Nuclear Science Abstracts of Japan"として収録し,米国,英国,フランス,ソ連等各国に1箇月おきに送付,紹介するとともに,各国からも゜定期的に情報および文献を得ている.また,原研は,米国原子力委員会から同委員会の報告書等の資料の一括寄贈を受けることになり,これに対し,原研は上記“Nuclear Science Abstracts of Japan″を同委員会に送付するとともに,その翻訳活動に協力することとなった.なお,原研は,38年8月同委員会から第1回の資料の寄贈を受けた.


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