第7章 国際協力
§1 国際原子力機関の活動

 国際原子力機関(IAEA)は,昭和32年発足以来年とともに加盟国が増加し,37年度末には81箇国であった加盟国数は,その後,アルジェリア,ガボン,アイボリー・コースト,リビア,ナイジェリア,シリア・アラブ共和国の加盟の結果,38年度末で87箇国となった.

1.第7回総会

 国際原子力機関第7回総会は,38年秋ウィーンにおいて開催され,わが国からは8名からなる代表団が出席した.本総会において討議された議題の主なものおよびその議事内容は,次のとおりである.

(1)事業費の財源
38年6月の理事会においては,国際原子力機関の事業予算の財源を確保するため,同機関憲章第14条B.1および財政規則の一部を改正し,加盟国分担金に行政費のほかこれまで任意拠出金によっていた事業費を含めることとすべき趣旨の勧告が採択されていたが,本総会においては,この勧告については触れず,本問題についてさらに検討し,第8回総会に適当な提案を行なうことを理事会に要請する旨の米国提出決議案が採択された.

(2)長期計画
1965年度を第1年度とする長期計画が承認され,今後各年度の同機関事業計画および予算は,この長期計画にもとづいて作成されることになった.

(3)1964年度*の事業計画および予算
 総額約980万ドルからなる1964年度事業計画および予算が採択された.


* 国際原子力機関の会計年度は,歴年である.

1964年度の予算は,(付録V-6表)に示すとおりで,前年度予算と比較すると約250万ドル増加した.
 わが国は,分担金として約15万ドルを,任意拠出金として4万ドルを,.それぞれ拠出することになった.

(4)保障措置制度の拡大
39年6月の理事会において仮承認された国際原子力機関の保障措置を熱出力10万キロワット以上の原子炉にも適用するための拡大規則案について,本総会は,これを記録にとどめるとともに,拡大規則案発効の以前に理事会が再び検討を行ない,その結果を総会に報告することを要請する旨の決議を行なった.

(5)理事国の改選
 総会選出の理事国は,憲章第6条A.3の改正により12箇国となり,本総会において,中国,ウルグアイ,モロッコ,コンゴ(レオポルドヴィル),ルーマニア,アフガニスタン,スイスの7箇国が任期2年の理事国に選出された.この結果,理事会の構成は,(第7-1表)に示すとおりとなった.

2.理事会

 国際原子力機関の理事会は,38年5月,6月,9月,10月,12月および39年2月にウィーンの同機関本部において開催された.討議された議題のうち主なものおよびその議事内容は,次のとおりである.

(1)保障措置制度の拡大
 国際原子力機関の保障措置制度の拡大については,38年6月の理事会において拡大規則案が仮承認され,第7回総会において前述のような決議が採択された.この決議にもとづき,39年2月の理事会において,拡大規則が正式に採択され,発効した.

(2)国際理論物理学センターの設立
 国際理論物理学センターの設立については,第4回総会において,国際原子力機関事務局に検討を要請する旨の決議が行なわれて以来,同機関事務局は,加盟各国の意向の打診,科学諮問委員会および専門家パネルにおける検討,理論物理学に関するサマースクールの開催等を通じて,同センターの具体案について検討を進めた後,38年6月の理事会において,本センターを4年間イタリアのトリエステに設置する旨の決定を行なった.ついで,9月の理事会において,同機関とイタリア政府との間の国際理論物理学センター設立のための協定が承認され,同センターは,1964年度から発足することとなった.

(3)事務局の改組
 国際原子力機関の後進国に対する技術援助活動を強化するため,同機関事務局の各部局に分散している技術援助関係の事務をまとめ,新たに技術援助局を設けることを骨子とした事務局改組案は,38年9月の理事会において承認された.

3.国際原子力機関のアジア・極東地域担当官の任命

 わが国が38年3月に開催した「原子力平和利用推進のためのアジア・太平洋諸国会議」は,そのコミュニケにおいて,国際原子力機関に対しその地域事務所の設立の検討を要請した.このコミュニケに反映された関係各国の地域事務所設立の強い要望に応えて,同機関は,38年9月新たにアジア・極東地域担当官を設け,タイのバンコックに駐在させることとした.


目次へ          第7章 第2節へ