第6章 放射能対策
§2 放射能専門部会

 37年10月開催された原子力委員会放射能専門部会は,核爆発実験の放射性降下物から国民が受ける放射線量を明らかにし,よって国民のこうむる障害の評価を行なうため,現段階で考えられる放射能調査のあり方について検討することとした。
 同部会は,39年1月「放射能調査の方針」を決定し,39年2月原子力委員会に提出した.その概略は,次のとおりである.「大気圏内,宇宙空間および水中における核兵器実験を禁止する条約」が調印されたが,今後とも放射性降下物の地表への蓄積量は増加傾向にあるので,その動向を常に監視する必要がある.さらに放射能調査によって得られた知識と経験は,原子力平和利用施設における万々一の事故等による不測の環境汚染などの場合における放射能監視ならびにその対策等の措置を講ずるに当って大いに役立つであろう.放射能調査は,
① 一般調査(環境,食品の放射能汚染によって国民のうける平均線量の推定を行なうことを目的とするもので,全国に適当に分布された調査網によって定常的に行なう調査)
② 特殊調査(国民の受ける平均線量の推定に直接寄与しないが,放射能対策上の必要から特定の調査対象について行なう調査)
③ 解析調査(一般調査または特殊調査にきわめて深い関係をもつが定常的でなく解析的,研究的目的をもって行なう調査)
④ 臨時調査(核爆発実験等にともない臨時的に行なう調査)
 の4種類とし,その実施に当っては,その種類に応じてその対象を適宜選択し,その取り扱いについては可能な限り統計的な考慮を払うものとする.さらに各論において,核爆発実験の放射性降下物により人体の受ける放射線を内部線量と外部線量に分け,これらを把握するため重要と思われる主要な核種をとりあげ,その各々を人体,食品および環境に対して,どの放射能調査を用いてどのようにして行なうか明らかにしている.


目次へ          第6章 第3節へ