第6章 放射能対策

 昭和38年8月,「大気圏内,宇宙空間および水中における核兵器実験を停止する条約」が米国,英国,ソ連をはじめとする109箇国により調印されたことにより,今まで競争的に行なわれた米ソの核爆発実験も一応終止符が打たれ,今後新しい核爆発実験による大気汚染の恐れは減少した。しかし,これまでに行なわれた多数の核爆発実験の結果,高空には今なおかなりの放射性物質が浮遊しており,これらの降下によって地表の放射性降下物の蓄積量は今後とも増加しつづけると考えられるので,なお十分な放射能監視が必要である。
39年2月ジュネーブで会合した第18回国際連合科学委員会が,放射線の人体に及ぼす影響に関する諸問題を検討した。一方,37年に中部太平洋で行なわれた核爆発実験による放射能汚染について,日本の照洋丸と米国のギルバート号との調査結果を比較,検討するため,38年9月,日米科学者会議が東京で開催された。
 国内における放射能測定調査および放射能対策研究は国立試験研究機関,都道府県衛生研究所等で積極的に推進され,その測定調査結果は放射能対策本部から定期的に発表され,また,放射能調査対策研究の結果は,38年10月,放射線医学総合研究所で開催された放射能調査研究発表会において発表された。


目次へ          第6章 第1節へ